さっきからキスしてばかりいる。これからどうするのかと聞いてみようにも、涼介に繰り返し唇を塞がれているので聞くことは叶わない。
セックスしたいんじゃなかったんだろうか。
「ん・・・ふ・・・」
抱き締められて直に触れる肌からは、涼介の鼓動が伝わってくる。凄く速くて彼が緊張してるのだということがわかる。そして曝け出された涼介の屹立を見れば、彼が昂っているのだということは一目瞭然だ。
涼介がキスばかりするから唇がヒリヒリと痛み始めた。気分だけはすっかりおかしくなって、結弦の前も上を向いている。
自分から涼介に触れてみようか。ビックリさせてしまうだろうかと少し考えたが、己の興味が向くままに涼介の硬茎に手を伸ばす。
「ふッ・・・ゆ、結弦!?」
口付けたまま涼介が息を呑み、焦ったように彼の身体が離れていく。大きく震えた涼介の身体を見つめながら、手を動かすと涼介が何かを堪えるようにギュッと目を瞑った。
我慢なんてしなくていいと思う。涼介だって結弦が埒をあける姿を見たいと言ったけど、今ならその気持ちが少しだけわかる。涼介が気持ち良くなって結弦にしか見せない顔があるのだとしたら、誰よりも涼介を知ったと言える。誰も知らない、自分だけの涼介。そんな風に考えると涼介を独り占めしたい気持ちが自然と満たされていくような気がするのだ。
「ま、待って・・・」
「なんで?」
涼介の力強い手に動きを阻まれて、結弦は納得がいかずに涼介を食い入るように見つめる。
「ッ!」
掴まれた腕ごとベッドに押し倒されて、驚いて涼介を見上げると、難しそうな顔をして彼が頭上で溜息をついた。
「優しくしたい、けど・・・」
「うん。」
「痛かったら、ゴメン。」
「痛いの?」
「・・・うん。痛いかも・・・初めてでしょ?」
「うん・・・。」
そろりと伸びてきた涼介の指が結弦の後孔を撫でる。意を決したように何か手に取ったらしい彼の手が再び後孔に戻ってきた時には、ぬるりと濡れたものが触れた。生温かいものと一緒に涼介の指がクルクルと彷徨ったあと、浅く押し入っては出ていく。涼介の顔はやっぱり難しい顔をしていた。
どうして涼介はいつも困った顔をするんだろう。眉間の皺が気になって、手を額に伸ばして人差し指でグッと深く刻まれた皺を押す。
「なんで変な顔してるの?」
「ご、ゴメン。俺、変な顔してる?」
「うん。」
何か堪えるように下唇を噛んだ涼介は、結局何も弁解しないまま、結弦の体内に彼の長い指を進めてきた。
痛いかも、と涼介は言ったけれど、痛くはない。ただ異物が侵入してくる違和感があるだけだ。指の侵攻より生温かく濡れたものが行き来する感覚の方がどちらかというと未知で不思議な感覚だ。
「涼介・・・」
「痛い?」
「ううん。」
もうさすがにここまでされれば、涼介がしようとしていることも、これから自分たちがどういう状態になろうとしているのかもわかる。そして単純に疑問が湧いただけだ。
「涼介の、入る?」
自分じゃ見えないからよくわからない。涼介がひとつになろうと苦心しているのはわかるし、堪えるものも多いようだから、涼介が望むようになればいいなと結弦は思うのだ。
結弦の問いに涼介が顔を火照らせて小さくひとつ頷いてくる。そんな涼介を見て満足をおぼえる自分は、痛いかもと脅されてもなお彼とひとつになってみたいと思うくらいには好きなのだ。その事を確信してホッとする。涼介に応えられる自分であることに安堵している。
必要とされないことは怖い。何よりも怖い。少し前までの自分はそう思っていた。
けれど涼介は結弦に何もなかったとしても必要としてくれるらしい。ただそこにいるだけでいい。彼はそう言った。
だから今は何の不安も抱かず彼の与えてくれるもの全てを疑うことなく受け取れる。そんな自分になれて、胸が苦しくなることはなくなった。
「ッ・・・涼介・・・」
「挿れても、いい?」
「うん。」
「力抜いててね。」
そっと添えられた涼介の熱さに怯んで結弦は身体を強張らせる。すぐに深呼吸をして涼介の言う通りに力を抜こうとしたものの自分も初めてのことに緊張しているらしい。なかなか思うように身体から力は抜けなかった。
「きゃ・・・あッ・・・りょ・・すけッ」
おへその辺りに涼介が幾度もキスをするものだから、くすぐったくて身を捩って声を上げる。そんなことをしているうちに自然に力も抜けていき、なんだか妙に真剣な面持ちをしている涼介がおかしくて笑った。
「んッ・・・ん・・・」
「ッ・・・はぁ・・・結弦・・・」
グッと涼介が押し入ってくる。お腹が圧迫されて苦しい。息を詰めていると、それを宥めるように涼介が結弦の名を何度も呼んだ。
「結弦、痛い?」
「ううん。」
「やっぱり、やめる?」
やめるかと問いながら涼介の侵攻は止まらない。苦しいのは確かだけど、涼介がこのまま進みたがっているのは明らかだった。彼が泣きそうな顔をしながらも嬉しそうなのがわかる。わかるからこそ、やめたくない。このまま涼介の望む通りにしてあげたい。
それでもどこかにしがみ付いていないと未知の感覚が不安で仕方なかった。手を伸ばせない代わりに足で涼介の腰にしがみ付く。
「うッ・・・」
涼介が焦ったように息を呑む。彼の昂りを締め付けてしまったらしい。
「涼介、いいよ。だい、じょうぶ・・・。」
「ホントに、いい?」
「うん。」
先ほどから結弦に聞いてくるわりに、堪え性のない顔をしている。進めてくる腰も止まる気配はないから、きっと涼介の我慢はとっくに限界を超えてしまったんだろう。
「結弦・・・」
覆い被さってきた身体は大きい。涼介が大きいことは知っているけれど、この瞬間ほど彼の腕の中を大きく感じた日はない。お腹がいっぱいで苦しくても、涼介の腕の中で揺さぶられている今、とても安心するのだ。
凄く不思議。苦しいのに安心するだなんて。
「ん・・・んッ・・・結弦・・・」
「・・・ッ・・・ふぁ・・・あッ!」
ただ圧迫感だけだったが、突然やってきた刺激に身体が驚いて跳ねる。
「やッ、なに・・・りょ、すけッ・・・」
「ここ? ここがいい?」
「わか、ッ、ないッ・・・あぁッ!」
「ゆ、結弦ッ・・・うッ・・・ッ・・・」
目の前をチカチカと星が飛んで、揺さぶられるまま涼介の激しさを必死に受け止めていると、急に涼介が動きを止めて抱き締めてくる。同時に呻く声が耳に届いて、気付いたらお腹の奥がじわりと温かかった。
「ごめ、ん・・・イっちゃった・・・。」
何故謝るのかわからなかったけれど、結弦の胸に覆い被さって申し訳なさそうにしている涼介の髪に手を伸ばして撫でる。柔らかさが指の合間を何度も通って、気持ちの良い感触だけ結弦に残した。
「涼介・・・んッ・・・」
大きな掌が中途半端に投げ出された結弦のものを包む。前も一度してもらったし、好きな人とするのはおかしな事ではないと知っているから大丈夫だ。身を任せて与えられるままに彼の手淫を見つめていると、間もなく結弦の先端から幾度も蜜が溢れた。
「ん・・・りょ、すけ・・・ッ・・・」
火照った身体で抱き締め合って、唇をくっつけては離してを繰り返す。こういう穏やかな行為は、涼介の長い睫毛を数えるくらいの余裕があっていいなと思う。
「ゴメン。今度は・・・もうちょっと頑張るね。」
「ん?」
謝られる意味が依然としてわからず首を傾げると、涼介がようやく笑う。なんでもないよ、と照れ臭そうにしつつも嬉しそうに笑うから、謝罪に深刻な意味はないんだろう。
涼介が嬉しそうで良かった。自分の心も火が灯ったように温かく安堵で満たされている。
衝動のままに涼介の頬に唇を押し付ける。すると再び嬉しそうに涼介が笑った。
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回収しきれていない伏線は、後日別口で回収させていただきます(大汗)
ちょっと頭が疲弊しておりますので、二人がめでたしのところで一旦ピリオドを。。。
と思っておりましたら、涼介サイドも書きたくなったので、初めてのことに彼がどれだけバタバタと慌てているか、明日もう一話お付き合いいただければと思います。
明後日からはようやく「碧眼の鳥」です。
予定ズレズレで申し訳ありません!
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朝霧とおる