酔いは抜け始めている筈だし、常識はちゃんとあると思っていた。和希の前では、老いには寝不足がどうのこうのと言っていたのに。客人を迎えている状況で、組み敷かれている事実に驚愕する。
「ちょっと、達也さんッ。ダメだからッ!」
「まぁ、堅い事言わずに。」
「いや、そういう問題じゃなくて・・・ッ」
哀しいかな、好きな相手にキスをされれば嬉しい。強引なようで優しく温かい唇が心地良い。本当に狡い。セックスより何より、キスに弱い事をこの男は知っている。
「最後まではしないよ。ちょっと気持ち良くなるだけだ。」
頷いてしまいそうになり、リビングの方から聞こえてきた物音で身体が強張る。
「いや、ダメだから。和希もまだ起きてるよ。」
「要が騒がなきゃ、大丈夫。」
耳元で囁かれて、首筋に生温かい彼の息がかかる。こんな事をされて、平静でいろというのが無茶だ。
耳を澄ませてみるものの、リビングからはそれ以上何の物音も聞こえてこない。和泉は厚手の布団を和希に渡して、優希と寝るようにソファを明け渡してきた。自分と和泉が並んで寝るには狭過ぎるが、優希は小柄だから、あの二人なら問題ないだろう。しかし静かだからといって、和希が寝入ってくれている保証はない。
「ほら、要。いつまで他の男の事、考えてるんだ?」
「いや、そういう意味じゃないから・・・」
「でも俺以外のこと、考えてるだろ? 同じだよ。隙だらけのおまえが悪い。」
「もう、意味わかんないッ」
「たっぷりわからせてやるから、安心しろ。」
今度こそ喚く口を塞がれて、和泉の舌が口内を暴れ回る。熱のこもった口付けに、翻弄されるのを止められない。
「ん・・・ふッ・・・」
宥めるように髪を梳かれ、想いの丈を塗り込めるように唇を重ねる。和泉の唇が首筋に落ちて、ついに要は陥落した。
一つひとつ優しい手が纏うものを取り払っていく。和泉の手が腹部へ滑り込んでくると、まだ少しアルコールの残った熱い彼を直接感じた。
「その気になった?」
耳元で尋ねてくる和泉は狡い。これで落ちるなという方が無理な話だ。肯定するのは悔しいが、黙って受け入れている時点でその気になっていることは筒抜けだ。
彼の唇から逃げて顔を背ける。和泉は気にも留めず、要の身体を弄り始めた。
「ぁ、ちょっとッ」
リビングにいる和希の事が気にかかって、声も碌に上げられない。だからといって素直に流されるにはスリルがあり過ぎて心臓に悪い。
「ぁ、達也さん、まって・・・」
和泉はいつもと違う要の反応を楽しんでいる気配すらある。惹き込まれそうな瞳で見つめられて、要は自らの手で口を塞いだ。
「声出さないのか?」
口元から手を退けない要を見て、和泉が微笑む。
「残念」
そう言いながらも、嬉しそうに和泉の手が要と彼の前を寛げる。緊張でまだ緩く熱を持っているにすぎない要の分身を、口の中へすっぽりと含んだ。
「ッ・・・」
いつ二人が部屋を訪ねてくるかもわからない怖さが、余計に要を煽る。いつも抱く羞恥心とは違う類いの恥ずかしさだ。
ねっとりと和泉の舌が陰茎に絡み、彼の唇で扱かれる。しっかりカタチを成すまで、さほど時間はかからなかった。
「んッ、ぅ・・・ん・・・」
的確に要の感じる場所を捉えて愛撫してくる。目眩がするような心地良さ。温かい口内に包まれて、欲しい刺激だけを与えられる。甘い甘い拷問だ。
「ぁ、達也さん・・・」
射精したくなって和泉の名を呼べば、優しく微笑みかけてくる。和泉が構わず口を窄めて吸い上げてくるので、焦って彼の肩を押しやろうとする。けれど力が入らず、抵抗も虚しく限界がくる。
「ぁ・・・ぁ、ッ」
小さく悲鳴を上げて和泉の口に抱擁されたまま吐精する。頭が真っ白になり、促されるままに精の放出が止まるまで吸い尽くされる。甘い痺れと、冬の寒さに似合わぬ浮かんだ汗が、身体の高ぶりを教えてくれる。
気持ち良くて、嬉しくて、恥ずかしい。この人が与えてくれる全ての刺激が、要を高めて弛緩させる。
要の放ったものを、和泉が躊躇わず嚥下する。その様を呆然と見つめた。
「そう、その顔だよ、要。」
「え・・・?」
「その蕩けた顔が見たかった。」
和泉が満足そうな笑みを浮かべる。彼は変わっていると思う。恋人だけイかせて楽しむなんて趣味が悪い。
悔しくて起き上がり、今度は和泉を組み伏せる。しかし和泉は慌てる様子もなく楽しげに笑っただけだった。まるで要がそういう行動を取ると、最初からわかったふうな顔だ。
「喰い尽くしてやる、っていう顔もいいね。」
組み敷いた下から抱き締められて睦み合う。結局和泉のペースに巻き込まれて、夜は更けていった。
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約半年間、お世話になりました!
また来年もよろしくお願いいたします。
本日12月31日朝6時に、こちらの続き「おまけ」をアップロードいたします。
それでは、皆様、良い年末年始をお過ごしください!!
管理人:朝霧とおる
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