忍者ブログ

とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

忘年会1

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

忘年会1

週末、ランチの時間帯に空席があるかと聞かれて三人分確保したのがつい先日。てっきり両親を連れてくるかと思いきや、優希が連れてきたのは長身の男二人組だった。

どちらも見覚えがあると思いつつも、わかったのは大内の方だけで、もう一人の男がどこで会った人なのか、どうしても思い出せなかった。

優希絡みで会ったことがある人なら、恐らく忘れることはない。そもそも会ったことがある気がしているだけで初対面かもしれない。挨拶を交わして彼の声を聞くものの、やはりはっきりとはわからなかった。年齢も自分たちより上に見える。見た目は三十代後半だが、落ち着いた話ぶりからすると、もしかしたらもう少し上かもしれない。

和やかな空気で話す三人に水を差すようなことを言うわけにもいかず、結局和希はその男の正体がわからずじまいだった。

家に帰って優希に尋ねると、愉快そうに笑顔を寄越してきた。

「忘れちゃった? 和泉先生だよ。養護教諭の。」

養護教諭まで聞いて、ようやく合点がいく。そういえばあんな容姿をしていた。部活で怪我をした時に何度か世話になった。

しかし何故彼があの場にいたのかがわからず、再び優希へ尋ねた。

「大内先輩の彼氏。」

「え?」

「でも付き合ったのは卒業してからみたいだよ。俺もね、話は聞いて知ってたんだけど、ああやって会うのは初めて。」

つまりカップル同士で顔を突き合わせていたということだ。わかっていなかったとはいえ、無性に落ち着かない気分になる。

「和泉先生、あんまり変わらないよね。」

自分たちが高校生だった時はすでに三十代に突入していたはずだ。ということは、今は四十代なんだろう。確かに印象も変わらず若いが、和希が気にしているのは、そこではない。

「優希。大内先輩はともかく、先生も知ってるわけ? 俺たちのこと・・・」

「え? 知ってるよ。」

何か問題でもあるのだろうかと不思議そうな目で見つめてくる優希に崩れ落ちたくなる。自分だけ知らずにいたのが何だか居た堪れない。先に言っておいてくれよ、という言葉を何とか呑み込んで、頭を切り替える。

「クリスマスのスペシャルメニュー、どうだった?」

「仔羊のお肉、美味しかった。独特の臭みがなくて食べやすかったし、ソースも素材の甘みを活かすようなソースで、結構好みの味だった。」

「そう。お口に合ったなら良かったよ。先輩たちは何か言ってた?」

「先輩と先生はパスタが気に入ってたみたい。二人ともクリームソースが好きなんだって。」

「そっか。嬉しいな。あのソース、結構料理長と揉めながら、時間掛かって作ったんだよ。」

試行錯誤したものを褒められるのは純粋に嬉しい。お客さんが美味しそうに食べてくれるのも嬉しいが、和希にとっては優希の口から聞けるのが嬉しいのだ。彼の言葉を聞くたびに、努力が報われたと心から思う。だから優希から新作の感想を聞き出すのは、和希にとってささやかな自己満足でもあった。

「そういえば、先生がさ・・・年末、パーティーでもやらないか、って誘ってくれたんだけど、いつお邪魔する?」

せっかく良い気分で自己満足に浸っていたのに、空気を読まない優希が和希を現実に引き戻す。しかも、行く事はすでに彼の中では決定事項のようだ。

「・・・じゃあ、29日はどう?」

内心項垂れて答える。年末年始は唯一優希と二人で過ごせる長期休みなのだが、優希が和希の憂いに気付くことはなさそうだ。

しかし代わり映えのしなかった年末年始が、今年は少し違ったものになるかもしれない。たまにはこんな刺激があっても良いだろう。大内と和泉の顔を思い浮かべて、心に温かいものが宿る。気恥ずかしくも微笑ましい気分で夕飯作りのためにキッチンへと向かった。














いつも応援ありがとうございます!!
励みになっております。

Twitter
@AsagiriToru
朝霧とおる

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

B L ♂ U N I O N
PR

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

プロフィール

HN:
朝霧とおる
性別:
非公開

P R

フリーエリア