恵一が自分たちの不確かな関係に悩み始めた。それはわかっていたけれど、恵一自らぶつかってくるまで紳助としてはする事がないと思っている。
失う事を怖がっている恵一は手に入れようとしない。自分に自信がないのもそれに拍車をかけている。
愛されていると自信を持って欲しい。そして自らこの腕に飛び込んできて欲しい。だから紳助の方からこれ以上深く手を伸ばしたりはしない。強引に恵一を自分のものにしても長続きしないだろう事はわかっているからだ。
「今日は随分、煽るようなことをするんだな。」
組み敷いた恵一は泣いていた。零れ落ちた涙を指ですくい取ってやる。しかし止まらずにまた目尻から次の涙が流れ始めたので、額にそっと口付けた。
たったそれだけで、恵一は嬉しそうにした。自分でどんな顔をしているかなんて自覚がないのだろう。好きだと全身で訴えながら、踏み出すのを躊躇っている。
一度組み敷いた恵一を抱き起こして上に跨いで座らせる。口付けで彼の気を逸らしながら、紳助は恵一の秘部を解し始めた。
愛撫することは自分にとっても刺激なのだ。恵一が感じる様を目に焼き付け、手で溶かしていくと恵一の身体の熱さが紳助にも伝わってくる。
「んッ・・・ッ・・・」
恵一の涙はひと段落したようだった。紳助が与える快感を素直に追い始め、指が恵一の良い所を突くたびに、腰が揺れて恵一の分身が震えた。
この愛おしい身体を食べ尽くしてしまいたい。紳助が恵一を抱くたびに感じる衝動だ。
「あ、ぁ・・・も・・・」
「欲しい?」
コンドームに手を伸ばして、すでに硬く実った自身と恵一の分身に手早く着けていく。
ベッドではないからスプリングの反動も使えない。後で腰にくるだろうなとは思いながら、恵一の身体を少し浮かせ、紳助の硬茎を秘部に充てがう。
恵一が初めて怯えたような顔をしたので、宥めるように彼の頬や唇に口付けていく。そんな事をして紛らわせながら、恵一の体重で紳助の分身を彼の中に埋め込んでいく。
「ぁ・・・あぁ・・・あ・・・」
いつもは馴染むまで待っているのだが、恵一の体内の熱さと柔らかさに誘われてすぐに腰を揺らした。
向かい合って跨がせて、いつもより密着した距離が自分のものだと錯覚させる。今まで押さえ込んできたものが溢れそうになってしまう。
心ごと、恵一が欲しい。
いつになく興奮して、恵一の最奥を目指して幾度も彼を上下させる。そんな紳助に恵一は必死にしがみ付いてくるので、その姿にまた煽られてしまう。
底がない。この想いにも欲望にも。
恵一は穏やかなセックスしか知らない。こんな感情的なセックスを経験した事がなくて、堪え方もわからなかったのだろう。
あっという間に訪れた絶頂に抗うこともせず、感じたまま極まろうと紳助の肩に爪を立てた。
痛みが呼び水となって、紳助もまた絶頂の波に攫われる。
「あぁぁ・・・あ、ッ・・・ぁ・・・ん・・・」
「・・・ッ・・・んッ・・・」
上に跨ったまま震えた恵一。そしてほとんど同時に紳助もゴムの中に熱を放った。
幾度も身体を震わせて達する恵一を抱き締める。信頼しきって胸に収まるのが堪らなかった。無防備過ぎて心配になってしまう。
自分以外の誰かにこんな姿を見せようものなら、許せないどころか彼を殺したくなるだろう。自分の狭量加減に笑えない。
恵一が自分を憧れているのは知っている。けれど純粋に慕ってもらえるのが申し訳なくなるくらい、自分は欲望の塊だ。こんな自分に好かれてしまった恵一を少し気の毒に思ってしまう。
「恵一」
呼んでも返事はなかった。
セックスの後、恵一はよく寝落ちする。そして死んだように眠り、朝まで目覚めることはない。
恵一の中から自分の萎えた分身を抜き去る。恵一が少し身じろいだが、それだけだった。静かな寝息を立て始めたので、紳助は安堵して布団に彼の身体を横たえ、自らもその隣りへ収まった。
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朝霧とおる