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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

冬の終わりに1(紳助×恵一)

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冬の終わりに1(紳助×恵一)

チョコレートの祭典は恵一にとって甘い日ではない。紳助が仕事先で貰ってくるチョコレートに戦々恐々とする日だ。何を渡してもくすんでしまう気がして、結局自分は何も渡せない。イベントに思い入れがあるわけではないのだが、持ち帰ってきた物の中に本命らしき品を見つけては、苦い想いで、箱の中に品よく収まったボンボンショコラを紳助の横から手を伸ばして摘まむ。

三月十四日も、叶う事なら暦から消し去りたい。紳助が義理でも誰かに贈り返すのかと思うと落ち込むのだ。しかし紳助はそういう素振りを恵一に見せないから、実際のところ彼が律儀に返しているのかどうかはわからずじまいだった。

「早く帰ってきてよ・・・。」

平日の火曜日。恵一が仕事休みである一方で、紳助はいつも通り出勤している。家を出る時、彼が手に持っていたのはアタッシュケースと製図用のアジャスターケースだけ。心配する要素は何一つないのに、隠し持っているかもなんて穿った考え方をしてしまう自分が嫌になる。恋人が魅力的なのは時に頭痛の種だ。

テレビの中で繰り広げられる陽気な空気に馴染めず、スイッチを切る。ソファに寝転がって無為に時間を過ごしていると、静寂を打ち破る音が玄関から放たれた。ガチャリと回った鍵の音に飛び起きる。

「ッ・・・。」

本当は玄関まで駆け出して迎えたいくらいだったが、首を長くして帰りを待っていたと思われるのが恥ずかしくて、ソファの端にうずくまる。

「恵一?」

「・・・おかえり。」

「ただいま。」

紳助がソファの背後でコートを脱ぎながら小さく笑う。時間を持て余していたのはバレバレなんだろう。それが凄く悔しい。

「恵一」

素直になれず、拗ねたフリをしてうずくまっていると、紳助の手が恵一の顎をすくって口付ける。恵一の機微を読み取って、惜しむことなく慰める手を伸ばしてくる。恵一は安堵の息をついて、紳助の唇を吸い返した。

「しよっか、恵一。」

紳助の一声で、胸がキュッと締め付けられる。ゆっくり歩いてくる彼がもどかしく、立ち上がって腕の中に飛び込む。

「待った?」

「待った・・・。」

ソファへ押し戻されて、紳助が覆い被さってくる。彼の重さを全身で感じ、力強い腕に抱擁される頃には、泣きたくなるほど恋しさが溢れた。









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