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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

恋を結う日々23

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恋を結う日々23

飯塚の優しい助言にケチをつけてしまったけれど。本当は飯塚の言葉に嬉し涙を堪えるので一苦労だった。

「帰るなんて言わないでよ?」

涼しい顔して、結構必死な飯塚の言い草に笑う。確かに彼の言う通り。今、駿のいる我が家へ帰れば、またズルズルと元の木阿弥になるだろう。それではいけないと、自分でも思う。だから飯塚が許してくれる間、彼の腕に縋ろう。

好きって言ったくせに、駿を好きなままの大友を受け入れてくれるらしい。自分が同じ立場だったらどうだろうかと考えたけれど、そんな心の広さは自分にはないかもしれない。それこそ毎日泣くことになりそうだし、別れの二文字が毎日頭をよぎりそうだ。

「おまえに・・・好かれてるって、実感したい。」

「結構頑張ってアプローチしてるつもりなんだけどな。」

「好きって言うくせに、ちっとも手出してこないじゃん。」

「付き合うって、そういう事だけじゃないだろ?」

「そんなの詭弁だよ。」

長い間、満たされてこなかったのは心だけじゃない。自分から進んで駿に手を伸ばしたのは数えるほどしかないと思う。自信のなさが大友にそうさせていた。でも、それではダメだったのだ。

与えられるのを待って、与えられない不満を募らせていくだけで。自分から求め、己が抱える意思を伝えることも大事だったはず。否を言えなかったから、駿の勝手も助長していった。自分を曝け出すことを怖いと思ったら最後。意思の疎通など叶うはずもないのだ。

「あのさ・・・。」

「うん?」

何を言っても大丈夫という安心感。飯塚の一挙手一投足を恐れる気持ちは出会った頃からないと思う。向けてくれる好意も心地良くて、自分がずっと欲しいと望んでいた心穏やかな時間だ。

飯塚と一緒にいるのはホッとする。ここにいても大丈夫だと思わせてくれる。甘えても、食って掛かって攻撃的になっても、受け止めてもらえるだろうという安心感がある。

「飯塚になら我儘言えそうな気がする。」

「言ってよ。どんなに好きでも、全部を察するってムリだよ。ちゃんと言わないと、わからないことってあるよ。」

「俺・・・後悔してる。嫌われるのが、怖かった。でも・・・その時点で、こうなる事は決まってたのかも・・・。」

布越しに目を冷やす氷が、ビニル袋の中で解けてポチャッと音を立てる。振り切れていた感情が落ち着きを取り戻していく。

心に空いた穴を冷静に見つめていると、無性に人肌が恋しくなる。飯塚の温かさを直に感じたいと思い始めて、シャツのボタンに手を掛ける。今、強く拒絶されたら、心が折れてしまいそうだった。しかし大友の願いを聞き届けたように、飯塚は外されていくボタンを黙って見守るだけだった。

「ちょっとだけ・・・。」

大友の言葉に飯塚が苦笑する。仕方がないなという顔をして、飯塚の手が大友の顎をすくい取った。

「ッ・・・。」

触れるだけのキスで、こんな温かい気持ちになれるなんて知らなかった。胸がじわりと熱を帯びていって、吐き出す息も心なしか温度が上昇した気がする。

「抱かないよ?」

「うん。」

キスをしたきり飯塚が手を伸ばしてくる気配はない。その分、大友は自分の確かめたいように飯塚に触れ、彼の胸に身を寄せた。









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