片岡の手がボタンを外しにかかっただけで身体が熱くなった。欲しいって、セックスをするってことだろうか。転校してしまう少し前に触れ合った時、もっと凄いことをすると片岡は言っていた。こっそり調べておけば良かった。そうすれば多少心の準備もできたかもしれないのにと今更後悔しても遅い。
「歩、家の人には言った?」
「メール、した・・・。」
「そう。いいの?」
「うん。」
ホテルの宿泊料は思ったより安くて、財布の中に収まっていた分で事足りた。両親には申し訳ない気もしたけれど、一日だけだから、と心の中で言い訳しながらメールをしたら、呆気なく了承してくれた。二人とも年度末だなんだと忙しくて、それどころではないらしい。
片岡の手が肌の上を滑り始めて、息を詰める。自分は片岡しか知らない。彼がしてくれた事が自分の性体験の全てなのだ。
「歩、緊張してる? 変わってなくて嬉しいな。」
しみじみと片岡が言う。嬉しいと言ってくれるのだから、知らなくても良いのかもしれない。何が起きるのかわからなくて、無意識に片岡の服を掴む。不安な気持ちはすぐに片岡へ伝わったようだ。
「歩、大丈夫。」
「・・・うん。」
向かい合って座り、ゆっくり片岡の唇が重なってきた。柔らかくて温かい。外気が乾燥しているのにそれを感じさせない感触に、心臓が爆ぜてしまいそうなくらい激しく鳴った。
幾度か触れるだけのキスをして合間に息継ぎをしようと口を微かに開けると、スルリと片岡の舌が歩の歯をなぞった。背中にゾクッと痺れが走って、胸も苦しさを覚える。
熱くて湿った口付けを合図に、ゆっくりとベッドへ倒される。シーツの冷たさで一瞬鳥肌が立ったけれど、すぐに口付けの熱さで溶かされた。
身体の緊張が次第になくなっていき、片岡の舌を追う余裕が出てくる。互いの息遣いを感じながら、唇の柔らかさと口内の熱さを確かめ合った。
何度も描いて夢想した片岡が目の前にいる。そしてその唇に触れている。その事にただ感動して、夢中で片岡の口付けを受け止めた。貪り尽くしたいという欲求を肌で感じて、身体はそれを喜ぶように熱くなっていく。
「・・・すけ・・・けん、すけ・・・」
キスの合間に片岡の名を呼んでみると、嬉しそうに微笑んで、またキスをくれた。
どれくらいの間、そうしていたのだろう。互いに纏うものを賢介が取り払って、気付いたら生まれたままの姿で唇を堪能していた。
兆したものが口付けの合間に揺れて恥ずかしい。足をモゾモゾと動かしていたら、咎めるように片岡が太腿を撫でてきた。
歩の硬茎が物欲しげにピクリと震える。自分は片岡の熱い淫らな手を知っている。焦らさず触れて欲しくて目で片岡に訴える。さすがに言葉に出すのはハードルが高かった。
「可愛い。どうしよう・・・」
どうするんだろう。片岡に目で問うけれど、彼は優しく微笑むだけだった。
恥ずかしくて、少し怖くて、自分の感情を持て余して泣きたくなる。そんな歩を宥めるように片岡が歩の身体中にキスを施し始めた。
首筋からゆっくりと胸元へと彼の唇が下りていく。最初はキスだけだったのに、時々舌のザラリとした感触が肌を這って、知らない感覚に身体が震えた。怖いのに気持ち良い。声を出さずにはいられない。我慢などしたら狂ってしまいそうだ。
「あ・・・す、け・・・んッ・・・けん、すけ・・・」
嬌声に合わせて、分身がどんどん張り詰めていく。けれどそれを恥ずかしいと思う余裕すらなくなっていた。
胸の飾りに片岡の口が吸い付き、舌で転がされる。女の子のように膨らみがあるわけでもない平坦な胸だけれど、男でも官能を呼び覚まされる場所なんだと知った。
きっと片岡が特別だから。この身体を暴こうとするその手も唇も、優しくて柔らかくて、それでいてとても情熱的だ。
「ん、んッ・・・あ・・・やッ・・・け・・・す、けッ」
片岡の形の整った唇に自分の屹立が咥え込まれる。前した時は彼の背に隠れて行為の様子は見えなかったけれど、今回は何も視界を遮るものはなく、生々しい現実が突きつけられる。視覚的な破壊力は抜群だった。
「ぁ、ウソ・・・けん、す、けッ・・・ヤッ・・・ん・・・」
片岡の唇が器用に硬茎を扱いていく。あんまり自分ではしないから堪え性がない。翻弄されるままに高まって、駆け上ってきた熱を止める術さえわからない。
「あ、ヤダッ・・・す、け・・・イくッ・・・んッ、ん・・・ッ」
どうしたら良いのかもわからないまま、潤んだ目を閉じ彼の口の中で爆ぜる。片岡の肩に突っ張った手も、さほど支えにはならなかった。
「ん、ぅ・・・ッ・・・ッ・・・」
幾度も吸われて全身が震える。気持ち良くて身体が溶けてしまいそうだ。
優しい愛撫の手が止まらないまま、後孔に湿ったドロリとした液体が触れる。何かと思って目を開けると、歩の達した証を後孔に塗り込める片岡がいた。
「賢介・・・何?」
「男同士はここ使うんだよ。」
「え?」
「怖い?」
「・・・ううん。」
達した余韻でまだ頭が上手く働かない。最初抱いていた怖いという気持ちがだいぶなくなっている。片岡に与えられるがまま、後孔に伸びてきた彼の指を受け止めた。
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朝霧とおる