こんな大事に扱われ、気遣うように抱かれたのは初めてで、どんな顔をしたら良いのか戸惑う。
ゆっくりと送られてくる熱に快感と倦怠感が交互にやってくる。香月の背に回した足はすでに怠い。けれどそういうのも含めて抱かれている心地良さに酔った。
「もっと・・・激しくしても、大丈夫だよ。」
「イくの、もったいなくて・・・」
荒い息の合間に紡ぐ言葉も、色っぽくて快感に置き換わる。
セックスってこんなに穏やかで包まれるような感覚だったかと、自分の経験に問うてみる。乱暴するような相手を選んだ事はないけれど、それでも香月の施す愛撫は、今までしてきたどの行為にも当てはまらなかった。
激しくないのに、身体ごと攫われるような快感が次から次へと生まれてくる。
苦しいのに気持ちが良い。こんな感覚、自分は知らない。
汗を流して、快感を追って、溜まったものを吐き出してスッキリする。それが自分にとってのセックスだった。
労って、愛されて抱かれると、切ない気持ちと安心感が交互にやってくる。色んな感情が忙しなく襲ってきて、心のタンクから仕舞いきれない感情のカケラが溢れ出してきた。
過ぎた気持ち良さから、早く解放されたいような、ずっとこのまま溺れていたいような、自分で自分の望むものがわからない。
「勝田さん」
呼ばれて瞑っていた目を開く。すぐ近くに香月の顔があって、幾度めかわからないキスをした。
香月の唇は柔らかくて優しくて泣きそうになる。蓮とのキスとは違う。拙くもないし、たくさんの恋を知っているキスだ。けれどそれを疎ましくは思わない。香月は蓮に置いてきた心ごと、抱き締めて受け止めてくれる。それを信じるに足るだけの温かさが彼には確かにあった。
自分より年下なのに包容力があるなんてズルいではないか。儚い花を愛でるように、こんな優しく抱くなんてズルい。囚われて、彼の檻から出たくなくなってしまう。
香月の肩に腕を回そうと伸ばしかけた手を彼の両手に阻まれる。シーツに縫い止められた両手にグッと力が入って、香月が腰を突き入れてきた。
「あッ・・・」
「ッ・・・」
息を詰めて二人で同じ快感を共有する。香月の熱が自分の中でまた一回り膨らむのを感じた。
「勝田さん。俺、限界・・・」
「我慢、してたの?」
笑って問うと彼の分身を刺激してしまったのか、香月が苦しそうに顔を歪める。
「乱れた君も、見せて。」
「勝田さんも。」
「ん?」
「気持ち良く、なって下さい。」
「気持ち良いよ。」
「もっと、です・・・」
再び腰を突き入れてきたのを合図に、今までにない激しい律動が始まる。花を前にする時の涼やかな彼からは想像できない獰猛さ。
「ッ・・・んッ・・・」
みっともなく喘いだりして興醒めされても嫌だなと思う一方で、身体の奥を香月の先端が抉るたびに我慢が次第に難しくなってくる。それくらい激しくて情熱的な腰使いに一度漏れ始めた声は止められなくなった。
「・・・ぁ、ッ・・・ぁ・・・」
心配になり焦って香月の顔を見れば、余裕のない目が自分を見ていた。
「勝田、さん・・・」
揺さぶりが大きくなって、嬌声が律動に合わせて漏れる。奥から湧き出す熱と快感に頭の思考が奪われていき、もはや何も頭に浮かばなくなった。
「こ、づき、く・・・」
呼ぶと香月が掻き抱いてキスをくれた。
「好きッ・・・勝田、さ・・・ッ・・・」
香月の分身が身体の奥で膨らむ。絶頂が近いのだと漠然と思っていたら、香月が二人の間で揺れる硬茎に指を絡ませた。
「あッ・・・」
情けない声を上げて快感を受け止める。脳天に響いた快楽は味わった事のない気持ち良さ。
「ん・・・んぅッ」
香月の指の合間から、勢いよく白濁の蜜が噴き上がる。それと同時に香月が息を詰めて、勝田は身体の奥に熱を感じた。
のし掛かってくる香月の重さを全身で感じ、余韻に浸る。互いから上がる荒い息が生々しい。勝田は気怠い心地良さに身を沈めながら、香月をそっと抱き締めた。
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朝霧とおる