鶏の照り焼きとラタトゥイユ、フランスパンにオニオンスープ、サラダを用意して待ち構えていたが、どういう訳か、勝田の箸はこちらが望むようには進んでいなかった。わりと彼の好物のはずだが、どうしたことだろう。
疲れているのだろうかと彼の様子を窺ってみるものの、今日はフレックスを使って早く帰ってきていたし、朝は元気に出かけていったように思う。
「凌さん」
「うん?」
「なんだか・・・元気ないですね。」
「そ、そう?」
「うん。」
一瞬、不意を突かれたとでもいうように言い淀んだところが妙だと思った。お互い、いい大人だし、なんでもかんでも話すことが正解だなんて思っていない。言いたくないなら、それでもいい。けれど、恋人が元気でないのは、やっぱり気になってしまう。風邪とも違う気がした。
ただ、問い詰めたところでこの一癖も二癖もある恋人が簡単に言うとは思えないのも事実。姑息かもしれないけれど、身体に聞くのもありだな、なんて少し物騒なことが頭をよぎる。
「食べきれない分は明日の朝に食べればいいですから。無理しないでくださいね。」
「・・・うん。」
皐がそう声をかけるなり、結局勝田は箸を置いてしまう。しかし箸を置いたわりには物欲しそうに鶏の照り焼きを見つめていた。
食べたいのに食べられなくて拗ねているような感じ。一瞬そんな風に思ったけれど、夕飯に熱い眼差しを注いだまま律儀にラップをかけていく勝田を無言で見守った。
* * *
覆い被さって、キスを仕掛けてダメなら潔く今夜は身を引こうと思っていた。平日だったし、勝田は明日仕事があるからだ。
しかしサラッと拒まれることを予測していたら、一切反発されることもなく、皐は勝田を組み敷いていた。
「いいんですか? 明日、仕事あるのに。」
「いいよ。」
くすぐったそうに身体を震わせている勝田を両手で押さえ込んで、剥き身にした上半身に口づけしていく。自分と同じ石鹸の匂いが鼻をかすめるたびに、一緒に暮らしているのだなと小さな感動をおぼえる。
唇にもっちりとした余韻を残す恋人の肌は極上品だ。吸い付いているだけで、皐の中心も歓喜して硬くなっていく。
さりげなく勝田の前を確認して、ちゃんと兆していることに安堵する。こっちはちゃんと元気なのだと下世話なことを考えて、勝田が落ち込んでいる理由を考えてみる。
いつも通りの朝だったから、何かあったとすれば日中だ。つまり会社で何かあったと考えるのが自然だろう。しかし異動があるような時期ではないし、特段忙しいようにも見えない。部下がミスをしてしまえば彼の帰りは自動的に遅くなるから、それも考えづらい。
全く心当たりがない元気のなさは、とりあえず置いておこう。今は乗り気になっている即物的な方の相手をすることにした。勝田の分身を確かめるように握って優しく擦っていく。
「ッ・・・んッ・・・」
うっとりとした目で皐の姿をとらえながら、秘裂から透明な蜜をこぼす。蜜が皐の手に絡まって、卑猥な音を立てるまで、そう時間はかからなかった。
昔は自分も、きっとこの恋人も、こんなゆったりとしたセックスはしていなかった。貴重な一刻を愛でるように、相手の細やかな反応を確かめながらする愛撫は、心を満たす。勝田を恋人にして知ったことで、皐はこの前戯の時間がとても好きだった。
大切にしていることが伝わると思うし、互いの体温を感じながら少しずつ高め合う行為は二人の関係を濃密にしてくれる。セックスを終えて息を上げながら、もっと深くこの恋人の心の中に入り込めたと実感できる。
「凌さん・・・んッ・・・」
皐の愛撫で勝田の身体は開放感に満ちて力が抜けていたけれど、皐の腰前で揺れる硬茎を見つけて、やんわりと握ってきた。
強くなく、触れて包むだけの優しい愛撫。それだけで皐の分身はさらに勢いを増して、勝田の手を濡らした。
「皐、気持ちい?」
「うん・・・凄く、いい・・・」
包んで握られ、昂りを確かめるように擦られる。それだけで爆ぜてしまいそうだ。
最後までする気はない。したくてたまらないけれど、腰の鈍痛に悩まされるのは勝田の方だし、立場ある社会人をそんな風にして送り出すわけにもいかない。
二人の間でそれぞれ滾っているものを、身を寄せてくっつける。期待するように二人の硬茎が波打って秘裂が蠢いた。
皐は覆い被さって二人の硬茎を合わせたまま、腰を揺する。すると身体中が痺れてざわめき出す。
「凌さん・・・足りない。」
皐は勝田の背後を取って横たわると、恋人の太腿を借りて、硬茎を押し込む。柔らかい感触に包まれて、鳥肌が立とうかというくらいの快感が身体中を駆け巡って、夢中になって腰を揺すった。
「ぁ、皐ッ・・・」
激しくなり過ぎないようにと考えることもなく、無意識に加減ができるようになったのは、ここ二、三年。
勝田の首筋に甘い息を落としながら、彼の昂ぶった分身を掌で包んで擦っていく。
「んッ・・・ぅ・・・」
腰の揺らめきと抽送のリズムが呼応した時、皐の手の中が波打って、熱い飛沫がシーツへ幾度か放たれる。末期の放出は皐の手も汚した。
恋人の絶頂を追うように、皐も太腿に濃厚な白濁を放つ。震えて力の出ない身体を抱きしめ合って、余韻を楽しむように二人で唇を貪り合った。
「ッ・・・ふぅ・・・」
恋人の身体はこんなにも素直なのに、口は固く、なかなか不満や不安をぶつけてくることはない。もうちょっと、我儘になってほしいのに。
強引に口を割らせるより、自ら言葉を溢してほしい。もう少し待ってみるかと、皐は色っぽい恋人の頬にお願いのキスをした。
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朝霧とおる
1. 無題
この二人のカプが大好きでSS楽しみにしていました~
先日飛行機の中でちらっと皐さんが登場してたのも嬉しかったです( ´ ▽ ` )
理央くんと出合ったことを帰ってから話したら、勝田さんは気づいただろうか
そこまでは結びつかなかったかなぁ・・とか余計なことまで考えてました(笑)
鶏の照り焼きを我慢している勝田さんがカワイすぎです(*´∀`*)
Re:
飛行機での皐に気付いていただけて嬉しいです。
ちょっと強引な登場でしたが、なんとかツインタワーの二人と結び付けられないものかと苦心した結果です(笑)
気の向くままに、また二人を書いていこうと思っていますので、気長に待っていただけたら嬉しいです!