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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

忘年会7

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忘年会7

双子がやってくるのは昼過ぎなのに、今朝早くから張り切って下ごしらえをする要が微笑ましい。澄ました顔をしていても、手際良く動く姿が、全身で楽しみであることを訴えている。和泉は要の珍しい様子を見ているこの瞬間も、楽しくて仕方がなかった。これが見られただけでも企画した甲斐があるというものだ。

そんな朝から飛ばして疲れないのか、と喉まで言葉が上がってくる。けれど楽しみにしている彼にそんな無粋なことは言わない。小さい子どもでもあるまいし、疲れたら勝手に小休憩でも取るだろう。

「要、オーブンは俺が見てるから、おまえは皿とグラスの用意をしてくれ。」

「ちゃんと見ててよ、達也さん。」

念を押すように言うのが可笑しい。グラス片手の和泉が信用できないのだろう。口に含んで香りを楽しみ、ゆっくりと飲み干していく。苦笑しながら要へ頷くと、訝しげな視線が返ってくる。しかし渋々要は食器棚へと向かった。

もともとこのマンションを購入した時は、オーブンは付いていなかった。去年リフォームした時に、オーブン付きのキッチンセットへと変えたのだ。

鶏の脂が弾け飛ぶ小気味良い音を聞きながら、冷酒を再び口に含む。冴えるような辛味に身体が熱くなる。オーブンの熱も相まって、火照っていく身体が心地良い。良い気分になっていると、要の呆れた声がキッチンの入口から聞こえてくる。

「二人が来る前に出来上がったりしないでよ。」

「ちょっとしか飲んでないよ。」

笑いながら瓶を掲げる。一時間で半分。和泉にしてはローペースだ。けれど要からは冷ややかな眼差しが返ってくる。

「達也さん、オーブン交代するから、もう座ってて。」

ご機嫌斜めのようで、そうではない。睨む目とは反対に口許が緩んでいる。すれ違いざまに要の唇をさらうと、要の耳がサッと染まる。恥ずかしいのか、和泉の方を見向きもしないでオーブンの前へ屈む。和泉は揶揄いたくなる気持ちをグッと堪えてキッチンを出た。要の機嫌が本当に悪くなっても困る。

ダイニングのテーブルを見遣ると、自然と満足感が湧いてくる。素人のセッティングとは思えない演出に、彼のハイセンスな感覚を思い知らされる。

要は、小さい頃からたくさん良いものをその目で見てきたのだろうな、と感じさせる感性がある。大事に育てられてきたことも彼の品の良さに滲み出ている。

せっせと昨夜折っていた紙ナプキンで作った扇が、テーブルの上で華やかに開いている。やることが丁寧で細かい。

「よくできてるじゃん。」

呟くように言葉を零して、和泉はテーブルの上を眺める。しかし彼の頑張りが例の双子に通じるかはわからない。

褒めてやってくれよと双子に念じながら、和泉はオーブンの前で鶏が焼けるのを待ちぼうける要を想った。







 








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