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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

忘年会4

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忘年会4

高校生にもなると学級閉鎖になるほど生徒が休むことはないが、具合の悪い生徒はちらほらいる。困った事に、保健室も大盛況だ。

和泉はこの時期、熱がある生徒は即帰す。というのも、高熱が出てからだと本人も帰るのが大変だし、周りにウイルスを撒き散らす結果にもなる。疑わしき根は摘んでおく。早く治れば本人の負担も軽くなるというものだ。

三年生はセンター試験前、睡眠不足の生徒も多く、また精神的にも不安定だったりする。そういう意味でも具合の悪い生徒が多いのも、この時期特有だ。

「勉強したい気持ちはわかるけど、早く治さないと試験どころじゃなくなるだろ? ん?」

「はい・・・」

「今までの頑張りを無駄にしないためにも、休まなきゃいけない時は、ちゃんと休め。無理して当日倒れてたら意味ないだろ?」

「そうか・・・」

「そうだよ。」

和泉は三十八度も熱があるのに授業に出ようと躍起になっていた生徒を説得していた。そしてようやく生徒の方が折れたのだ。

頑張るのは良いが、具合の悪さが長引く方が結果的に不利だ。気合いで頑張っても、効率は悪い。若いのだからさっさと治して、また全力で走ればいいのだ。

「親御さんに連絡するから、荷物取ってこい。それとも誰かに頼むか?」

「自分で取ってきます。」

「わかった。じゃあ、荷物取って、すぐここ戻ってこい。」

受話器を取って、彼の希望を汲んで母親の勤め先に電話をかける。最近は共働き家庭が多く掴まらないことも多々ある。彼の場合も例に洩れずだったが、幸いにも祖母が近くに住んでいて、迎えに来てくれることになった。

迎えを待つ間も、彼は参考書を睨んでいる。そんな事をしても頭には碌に入らないだろうが、ようは気持ちの問題だ。何もせずにはいられないのだろう。わからないではないのでベッドへ横になることだけ言付けて、あとは見て見ぬフリをした。

帰さねばならない最後の生徒を保健室から見送る。しかしそれで室内が静かになるかというと、全くそうではない。なんとなく精神的に不安定で教室にいられない生徒、悩みを抱えて訪ねてくる生徒が休みなく来る。

しかし和泉はそれを億劫だとは思わない。生徒たちにとって養護教諭とは、親でも担任でもない、ある種別次元の大人だ。物理的な距離がある分、本音を零しやすい。だから思春期の複雑化した彼らにとって、心を休めるための拠り所になることも少なくない。

彼らが大人になる過程で苦しみの階段を上っている中、自分がその手助けができるのなら本望だ。

周りの支えがあってこその自分。それは和泉自身が今まで感じてきたことだ。今度は自分が支える側に立つ。順番が必然と巡ってきた。ただそれだけだ。

そして今日も生徒と向き合う。一人ひとり、違うものを抱えて、いつかそれを昇華して巣立っていく。要もあの双子も、ちゃんと巣立って社会で闘っている。

真摯でいること。可能性を信じること。自分にできることを過信せず、これから先出会う生徒を見守っていく。

和泉は寒いと生徒に文句を言われながらも窓を開ける。生温く淀んでしまった空気を入れ替えるのだ。

心に溜まってしまうものも小出しにしていけば、人はちゃんと前を向いて生きていける。時々やらねばならないその毒抜きを、自分は日々引き受ける。生徒が健やかに過ごせるためのこの仕事は、和泉にとって大きな誇りだ。

「寒かったら、布団被ってろ。」

心を守る術を身に付ける手助けができればいい。

和泉は晴天の空に彼らの健闘を願った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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「忘年会」最終日は12月31日となりますが、
その後、アンケートを予定しております。
お気軽に投票いただければ嬉しいです!!
(構想を練ってあるお話のうち、どれから読みたいですか。というような内容です)


年始一発目は「ツインタワー」の続編を予定しております。
「沢田家の双子」番外編であまりカップルたちの絡みを書かなかったので、
「ツインタワー」では18禁全開な感じでございます(笑)
またお付き合いいただければ嬉しいです!

年末、お忙しい時に足を運んでいただける幸せを噛み締めつつ、
お仕事の合間に、また作成していきたいと思います!!

それでは長くなりましたが、これにて。。。


管理人:朝霧とおる


 
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