肌を刺すような寒さも、一家団欒の場であるリビングでは感じない。一年のうち、この瞬間だけは、少し畏まって背筋を伸ばし互いに向き合う。そして沢田家の主は口を開いた。
「あけましておめでとうございます。」
「今年もよろしくお願いします。」
今年もまた四人元気で顔を合わせられたことを感謝し、和希は目の前に座る両親と隣りに肩を並べる双子の兄、優希に頭を下げた。
「去年こそは、どちらか一方だけでも良いから結婚して欲しかったんだけど?」
「まぁ、二人とも男だから、そんなに急ぐこともないんじゃないか?仕事はちゃんとして自立してくれてるわけだし。」
母の小言と父のフォローはこの二年ほど細々続いている。父は温厚で、あまりガツガツした人ではない。優希と和希の恋愛ごとにも結婚にもさほど関心を示さない。母の熱に困っている自分たちとしては、父の低温具合が助かっている。
「大体、二十八にもなって兄弟で暮らしてるなんて、女の子の一人も連れ込めないじゃない。せめて別々に暮らすとか。」
和希は都内のイタリアンレストランでシェフをしている。兄の優希は同じく都内の病院で小児科医をしていた。通勤に便利だと親には言って始めた同棲だが、さすがにその言い訳も苦しくなってきたのは自覚している。
たった二人、閉じた世界で生きてきたわけではない。それでもやっぱり好きな気持ちが高じて、和希と優希は二人でいる道を選んだ。両親の目を欺き通すのも、きっといつか限界がくる。それはお互いそういう関係になった時からわかっていたことだ。
覚悟はしている。けれどなんだかんだ沢田家は仲良く時を刻んできたわけで、それを壊すことになるかもしれないと思うと、和希も優希も踏ん切りがつかないままここまできてしまった。
タイムリミットが近付きつつある。思わぬ形で露見する前に、事実を明かす必要があるように思えた。
「結婚とか、ぴんと来なくてさ。」
優希が苦笑いしながら同意を求めてきて、和希は曖昧に頷き返す。
「まったく情けないんだから・・・。母さん、あんたたちが可愛いお嫁さん連れて来てくれるの、楽しみにしてるのよ?」
母さんの言葉が胸に突き刺さる。隠し立てする必要のない恋愛ができるのなら、誰も苦しまない。理屈ではわかっていたって、心は思うようにはならない。きっと父のことも母のことも傷付けることになる。動揺させるだろう。けれど優希と一緒にいたい気持ちは変わらない。この十年以上もの間、変わることはなかった。
優希と二人、年の暮れに一つの決心をした。二人の関係を正直に話そう、と。
隣りにいる優希が目配せをしてくる。和希は小さく一つ頷いた。
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