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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

沢田家の双子「近すぎて遠すぎて41」

同棲だとは口が裂けても言えない。せっかく家を出るのに何故兄弟で同居なのかと母にはしつこく食い下がられたけれど、家賃も浮くし料理ができる和希となら楽だから、と言い続けた。

この関係が明るみに出れば、絶対にダメだと言われるだろう。好きにしなさい、と言ってもらえるだけの生活力はまだ自分にはない。和希は社会に出て六年経つけれど、自分はまだ駆け出しの身だ。当面の生活費は和希が出してくれることになっているから、この同棲は和希の好意で成り立っている。身勝手な感情だけで関係をぶちまけてしまうわけにもいかない。

「連絡も取ってなさそうだと思ったら、今度は急に同居だなんて。男兄弟ってこんなものなのかしら。」

世間の男兄弟はこうではないだろうと思ったけれど、わざわざ身を滅ぼすような発言をするつもりはない。

「和希のご飯、美味しいから。」

「和希。兄弟の胃袋掴んでどうするのよ。ちゃんと女の子捕まえてきなさい。優希も、和希に頼りっぱなしはダメよ。」

耳に痛いが母の小言は聞き流すしかない。

「まぁ、仲良くな。」

父が助け舟を出して話が纏まる。母はどこか釈然としない顔で溜息を吐きつつ、渋々話を打ち切った。

今日、優希は実家を出ていく。二人で探した部屋に荷物のほとんどは運び終わっている。後はこの身を提げて乗り込むだけだ。和希はすでに一週間前から移り住んでいる。

二階の自室に一人で上がり、ベッドに寝転がって天井を仰ぐ。この部屋で重ねたたくさんの思い出の中心には、いつも和希がいた。

いつの間にか兄弟が大切な人に変わっていた。恋をした。好きが高じて苦しくて、たくさん泣いた。二人で心が通じ合っても、どこかまだ不安だった。今ならわかる。二人とも幼かったのだ。自分のことで精一杯で誰かの人生を負えるほど大人ではなかった。ただそれだけだ。

確かな未来も見えず、追い討ちをかけるように、和希から会うのをやめようと言われた。離れた六年間は寂しかった。恋しくて堪らなかった。けれど自分の未来のために時間を使うことで、ちゃんと自信が付いた。そのために確かに必要な時間だったのだ。

ベッドから身を起こすと、和希がちょうど呼びに来る。もうそろそろ出ないと、あちらへ着く頃には陽が暮れてしまうからだ。

残りの荷物を纏めて下へ降りると玄関で父と母が待ち構えていた。

「父さん、母さん、お世話になりました。」

自然に頭を下げようという気分になる。みんな実家を出る時はこんな切ない気分を味わうものなのだろうか。

「なんだか、あっという間ね。和希が出て行ったばかりだと思ってたのに。」

「身体には気を付けるんだよ。」

「うん。父さんや母さんも。」

この時、人生の節目というのは自分で付けていくものなのだと悟った。自分の人生は誰のものでもない。自分に全ての責任がある。けれどそれを全うしたければ、自立していなければならない。これからは生活も自分自身のことも全てが自己責任。自分はやっとそのステージに立てたのだ。誰の所為にもできない。けれどそれは自分の責任で意思を全うできることの裏返しでもある。

和希が会うのをやめようと言ったあの日。寂しさに押し潰されてしまいそうだった。けれど和希があの言葉に込めた意味を、今日、本当の意味で理解することができた気がした。











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