高校三年生になった冬。二人で決めたこの先六年間の道程は酷く長いもののように思える。この春から優希は医学部へ進学するため家に残るが、料理人を目指す和希は住み込みで修業するため家を出る。お互いの夢のためとはいえ、一時離れることはやはり寂しい。生まれてからずっと一緒で、初めての別離だ。ここ最近は二人で肌を合わせることに没頭していた。
「もっとして、和希・・・」
達して萎えたものを抜こうとして、引きかけた腰に優希が足でしがみ付いてくる。そんな仕草に煽られて再び兆してしまう自分も大概だろう。
「もう母さんたち帰ってくる頃だよ。」
「やだ・・・もっと・・・」
キスを強請られて、欲されるままに与える。互いの存在を喜び、心を通わせ、身体に溺れる。背徳感がさらに二人の熱を上げていた。
好きだから欲しい。その感情はとてもシンプルで、すぐ手を伸ばせば届く距離が我慢を難しくさせた。身体を駆け巡っていく快感に抗えるほど意志も強くない。求めて求められて満たされていく感覚を一度覚えてしまえば抜け出せなかった。
「和希。」
「ん?」
「・・・浮気したら許さない。」
「しないよ、そんなこと・・・不安?」
「だって、和希はモテるから。」
苦笑しかけて息を呑む。優希の眼差しはあまりに真っ直ぐで真剣だった。
「和希の心が別の人のものになるなんて耐えられない。何もいらないから、和希とずっと一緒にいたい・・・」
頬を伝って落ちた涙を寄せた唇で拾い、繋がったまま、そっと抱き締める。優希は時々怖いくらいに求めてくる。自分への底知れない執着を感じて、受け止めきれるか不安になることがある。和希が家を出ると話して以来、心が不安定なのだろう。何の保証も確約もないこの関係が、優希の心をざわつかせているようだった。
「和希、行っちゃイヤだ・・・」
宥めるようにキスを降らせて、ゆっくり溶かすように腰を揺する。涙を零しながら喘ぐ姿が煽情的で、硬く実り始めた自分のモノで、この二年の間で覚えた優希の内部を擦り上げる。
「あぁ、はぁ・・・あ、ぁあ・・・ん」
「優希ッ・・・俺がこんなことするの、優希だけだよ。」
「ッ・・・あ、かずき・・・ん、ん、はげしぃ・・・あぁッ・・・」
腰を揺すって新たに生まれる快感が、より一層和希の腰使いを荒くさせる。
「はぁ、はぁ・・・ゆう、きッ・・・」
迫り上がってきた熱に逆らわず、欲望の赴くままに優希を揺すった。何度か中へ吐き出した白濁の蜜が硬茎を抜き差しするたびに卑猥な音を立て溢れていく。
「かず、き、ズルい・・・」
ズルいと言われればズルいのかもしれない。漠然とした未来への不安を自分は優希に隠している。二人でいるという選択に、果たして明るい未来があるのかわからない。優希は不安を隠さないけれど、自分は不安と向き合わず少し距離が離れることを幸いに見て見ぬふりをしている。卑怯な考えに、優希は敏感に反応しているに過ぎないのだ。
せめてこの瞬間だけは互いの熱情に溺れてしまいたくて、二人の間で力なく揺れる優希の陰茎を手で包み込んで高めていく。すると小さな悲鳴とともに、和希の硬茎を秘部が締め付ける。何度も絞り取られそうになりながら抜き差しと愛撫を繰り返した。
「かず、き・・・も、イく・・・」
「まだ、ダメ。イかないで。」
「やぁッ・・・あ、あッ・・・んッ・・・ぁ・・・」
意識が飛びそうなほど感じ入っている優希の硬茎の根元を戒める。すると達せないまま腰をピクリと突き上げて苦悶の表情を浮かべる。数度それを繰り返して、ついに泣きが入った。
「も、やぁ・・・イかせて・・・かず、きッ・・・」
「一緒に・・・な?」
強く腰を突き入れてガクガクと揺さぶれば、優希が下で震えながら快感を享受して達する瞬間を待ちわびている。戒めていた手を優希のものから外し、一際強く腰を突き入れる。
「ッ・・・ああぁぁぁ」
呆気なく嬌声が上がって後孔が締まり、和希の硬茎がドクリと波打った。
「うッ・・・」
優希の吐き出した白濁の蜜が二人の腹部を濡らす。和希もなりふり構わず優希の中に熱を注ぎ込む。するとその熱を感じたのか優希が切なげな声を上げた。
「・・・きもちぃ・・・」
優希が甘い息とともに言葉を吐き出す。見下ろした眼差しは惚けていて、どこか満足げだ。
何度言葉を紡ぐより、身体は嘘をつかないからわかりやすい。求めていることも求められていることも、ダイレクトに伝わる。
「和希、ごめん・・・」
「何が、ごめん?」
「我儘言って、困らせてる。」
「・・・。」
「好き過ぎて、壊れちゃいそう。」
「・・・うん。」
「これからの六年間は、きっと必要な時間なんだよね?」
「うん。」
それ以上は言葉を交わさず、お互いを労わるように抱きしめ合った。別離の先に二人の答えが自ずと出ることを漠然と感じている。離れてしまえば薄れゆくのか。それとも焦がれるほどに求め合うようになるのか。答えはわからないけれど、二人が選ぶ道が行き違うことのないように、今は願うことしかできない。
ずっとこの気持ちを閉じ込めて大事にすることは簡単だ。けれどそれでは先に進めない。子どものままでいることはできないのだ。働いて自立し、社会から必要とされなければ、一人の人間として並び立つことさえできない。この気持ちを押し切りたいなら尚更、自立した人として認められなければ二人の未来はない。いずれ誰かの目に二人の関係が晒された時、迷わずブレずに堂々としていたい。この先の六年間がそのために必要な時間だと、和希は信じたかった。
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朝霧とおる
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