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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

沢田家の双子「近すぎて遠すぎて27」

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沢田家の双子「近すぎて遠すぎて27」

午後になって腰の痛みはだいぶ引いたけれど、下半身に何か留まっているような違和感は依然として消えない。結局重い身体に嘘はつけず、保健室へ足を向けた。

「いずみせんせい、おなかいたい・・・。」

「腹? 下してはいないのか?」

「ちょっとだけ。」

腰ほどではないけれど、実はお腹の調子も少し悪かった。和希が少し中で出してしまったらしく、気付かず洗い流さなかったからだ。大内とした時はコンドームを着けてくれていたから、こういう事態は回避していた。頭が回っていなかった自分と違い、大内は冷静だったのだなとこんなところでも気付かされる。

「熱は? 一応計っておけ。」

「はい。」

和泉の前に重い腰を下ろして、促されるまま素直に体温計を受け取る。ジッと何かを見定めるような和泉の視線を不思議に思ったが、彼の発した言葉に凍りつく。

「男としただろ?」

「ッ・・・。」

「沢田、責めてるわけじゃない。誰かに強引にされたわけじゃないんだな?」

「・・・。」

頭が真っ白になりかけたけれど、和泉の目があまりに真剣だったので心配させているのだと気付く。辛うじて首を横へ振った。

「そうか。ならいいんだ。」

「なんで・・・」

「その歩き方で腹痛とくれば相場は決まってる。大人を舐めるなよ。」

体温計の計測終了音が鳴って和泉に手渡す。

「熱はないな。どうせ碌に動けないんだろうから休んでいけ。次の時間は体育か?」

「はい。」

「担任には適当に言っておくから。ベッド使え。」

「はい・・・。」

頭を無造作に撫で回されて、気まずさが少し和らぐ。そして和泉はそれ以上何も言わなかった。
ベッドに横になり窓の外を見遣ると、クラスメイトたちが校庭で走り込みをしている。三クラスの男子が合同だから大所帯だ。それでも和希の姿はすぐに見つかる。

長いストライドで足を運び、筋肉質な線が美しく伸びていく。男として少し物足りない自分とは全く違う体躯がそこにはある。優しくて、強くて、自分にないものを持っているその身体。心ごと全てが欲しい。欲張りだとわかっていても、一度叶えばもっと欲しくなる。

この窓のある方へ視線を寄越してくれないかな、と念を送る。校庭を何周かして、先生の合図で皆が足を止めた時、その想いが届いたかのように、同じく足を止めた和希がこちらに視線を寄越した。たったそれだけの事が嬉しい。ジッとこちらを見据えていた視線は、集合の掛け声と共に去ってしまっても、気に掛けてくれている想いが伝わって心は満たされる。

明日も明後日も、そしてずっと遠い未来も今日の日のようであって欲しいと願いながら、優希は校庭で戯れる人影を見続けた。






 








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