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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

瑠璃色の王と星の子【ある日の朝】

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瑠璃色の王と星の子【ある日の朝】

天空の城のとある一室。豪奢な天蓋付きのベッドの中で目覚めた紫苑は、隣りに温もりを感じて口元を緩める。頬を仄かに染めて丸まる愛おしい塊。その額に唇を押し当ててもなお、彼は夢の中にいるようだった。

無意識に彼の手が紫苑の羽織物を掴んでくる。振り払うのは躊躇われて、時間の許す限り身体を寄せることにした。

布の切れ目からチラチラと朝陽が差し込んでくる。窓の向こうから、鳥の囀りが聞こえてきて、今日もこの城を纏う空気は平穏そのものなのだと知る。

この腕に抱く彼のために、世界は平和であって欲しい。民に不幸があるたびに心を痛める繊細で多感な彼。彼を悲しませないためだけに、紫苑はこの身を捧げて王として力の及ぶ限りその務めを全うすると決めている。

先ほどまで大人しく腕の中で寝息を立てていた彼が、急に身じろぎ始める。もう暫く夢の住人でいさせてやりたいような、早くその瞳に自分の姿を映して欲しいような、二つの感情で揺れ動く。

しかしどうやら寝返りをうちたかっただけのようだ。再び安らかに寝息を立て始めた彼の髪を紫苑はその長い指で梳く。

星の宮、神の化身である彼を、紫苑が囲い込む事を良く思わない輩もいる。あの手この手で興味を引こうと、良からぬ事を考えてこの純真の塊を惑わそうとしているのだ。

紫苑は彼が幼い頃から、その邪な手を断ち切り、自分の隣りで全幅の信頼を寄せて寝入る彼を守ってきた。それはこの先も変わらないだろう。

古より王族に産まれる星の宮の主。純粋であるが故に、人を疑う事を知らない。神から託された人智を超える力を、邪なものに使わせては酷だろう。この力は民を守るために存在する。だから王の名の下において、彼を全ての忌むべき存在から守るのが自分の勤めだ。

擦り寄ってくる愛しい温もりはまだ紫苑の羽織を掴んでいた。しかしもう勤めの準備をせねばならない。気持ち良さそうに眠るその手を解くのは胸が痛む。紫苑は掴まれたままの羽織物を脱いで、彼の側に残す事にした。
 * * *
頼もしいその身を掴んだつもりが、瞼を開けて目の前にあったのは抜け殻。紫苑の残り香を胸いっぱいに吸い込んで、少し芽生えてしまった寂しさを紛らわせた。

「起こして下さればいいのに・・・」

自分を置いて公務へと行ってしまった彼が恨めしい。優しい彼の事だから、起こすのが可哀想だと、そんな事を思ったのだろう。

しかし眠くても構わないから、その腕に抱き締められ、少し言葉を交わし、激務へと向かう彼をこの目にしっかり焼き付けて送り出したかった。毎朝同じ事を思うのに、どうしても彼の方が先に目覚め、自分が目覚める頃には、もうその姿はない。

我儘を言うようで、紫苑に願いを訴えるのは躊躇われた。きっとこの身を思っての彼の行動だとわかっているからだ。

湯浴みをする為に呼び鈴を鳴らす。この身を清め、自分も公務へと向かわねばならない。

民の幸せを神に願い、星を読む。移り変わる季節や天候を知る事は、民の生活の指針となる。重要な責務だった。

そしてもう一つ。王に何かあった時はこの命に代えて、戦いで負った傷や心の傷を癒し、病を和らげる。しかし幸いにもそのような大事には至った事がない。先代から今まで、大きな戦がないということが、その理由だろう。

「星の宮さま、お目覚めでございますか。」

「うん。湯浴みをしたいんだ。」

「左様でございますか。お待ち下さい。」

侍女が次々と部屋へ入ってくる。生まれた頃からずっと変わらない日課。目覚めたら湯浴みをして、祈りを捧げ、大地の恵みを食す。垂れ布が取り払われた窓から眩い光が部屋いっぱいに差し込む。今日もいつもと変わらぬ穏やかな日々が始まろうとしていた。








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区切りが良くなったら・・・と申しておりましたが、おそらくこの気まぐれブログで区切りが良くなる日は永久に来ないと思いまして、アップを始めます(笑)
J庭にて無料配布しました「瑠璃色の王と星の子」です。
もうひたすらお互いを好きな二人がイチャイチャしている話です。
自分にとって都合の良い世界観で甘い話を書いていると、荒ぶるメンタルも落ち着きます。
本日から配布分に関して連日投稿、失礼いたします。。。
投稿時刻は朝10時に設定しております。

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