部屋の中が煌々と明るく、一体何故、寝台に横たわっているのだろうと思いをめぐらせる。
そして今朝の騒動を思い出して飛び起きようとしたが、身体が上手く動かずに大きな寝台の上を転がって再び寝台に身体が沈み込んだ。
「ッ・・・紫苑様・・・」
目覚めたはずの紫苑の姿がどこにもない。
きっと彼のことだから、力尽きた自分を寝台へ運び、さっさと公務にでも向かってしまったのだろう。
それが酷く寂しく思えて、彼の顔が見たいと思った。けれど公務の邪魔をしたいわけではない。自分も今日は朝のごたごたで祈りの儀式をしていなかった。
まずは自分の務めをしっかり果たそうと、部屋の外で控えている侍女に声をかける。
「誰か。」
「凛様。ここにおりますよ。」
少し急いた声で呼んだ凛を宥めるように、侍女が落ち着いた声で返事をする。
「湯浴みがしたいのです。」
「かしこまりました。お待ちくださいませ。」
身体が驚かないように今度は慎重に身を起こして、凛は寝台からゆっくり足を床へ降ろす。想像したよりしっかり足がついて、身体がふらふらと揺れ動くこともなかった。
星の宮はその細い身体からは想像ができないほど、天の偉大な力に守られている。疲弊した身体に命が漲るのも人より早く、凛の身体は平時と遜色ないくらいに戻っていた。
侍女たちが用意してくれた湯で身体を清め、祈りの儀式に使う衣装を身に纏う。紺の布地に金の刺繍が丁寧に施されている、星の宮だけが身に着けることを許された衣。
天に散らばる星々の輝きのようで、肩にずしりとくる重さが決して動きやすくはないものの、凛は幼い頃から気に入っていた。
「まだ、間に合いますね。」
陽の位置を見る限り、昼を過ぎたばかりだ。紫苑へ献上する花湯を凛の公務の後に用意しても、十分彼の休息時間に間に合いそうだった。
「紫苑様に、後で伺いますとお伝えください。」
「承知致しました。凛様、お身体はよろしいのですか?」
「はい。もう何ともありません。」
「それは、ようございました。わたくしどもも紫苑様に叱られずに済みます。」
侍女たちが華やかに笑う様子に誘われて、凛も軽やかな笑みを浮かべる。
しっかり帯を締めてもらった後、凛はすぐさま祈りの塔へと向かった。
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朝霧とおる