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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

冬の精霊7

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冬の精霊7

急に抱き締められ、驚いて集中を切らす。凛を纏っていた光と熱が急速に消えていく。

大丈夫かと覗き込んだ紫苑の顔は苦しそうに歪められていた。

「紫苑様ッ!」

しかし悲鳴を上げて心配したのも束の間、紫苑の瞼が蠢き、覚醒の予感に期待で胸を膨らませる。

「紫苑様・・・」

見開いた彼の瞳に自分の姿が映り込むと、凛は安堵で全身の力が抜けた。

「紫苑様・・・紫苑様・・・」

「・・・凛?」

「はい。凛でございます。」

「・・・どうして、泣いておるのだ?」

「泣いてなど、おりません・・・。」

「泣いておるではないか。」

ホッとして流れ落ちた涙を見られるのが恥ずかしくて、咄嗟に俯く。しかしすぐに紫苑の手で顎をすくい取られて、唇を吸われた。

「悪い夢を見ていたようだ。凛、何故、私はここにおるのだ?」

寝台で寝ていたはずなのに、目覚めて花湯と香に囲まれていれば誰しも驚くだろう。けれど、口で問うたほど、紫苑はそのことを気に留めているようには見えなかった。

「夢の使者が、紫苑様に悪戯を。紫苑様の記憶を奪いにやってきたのでございます。」

「そうか・・・。それでそなたは泣いておったのか? 心配するな。凛のことを何一つ忘れてはいないよ。」

「はい。」

「私を迎えに来てくれたのか?」

「はい。」

「そなたのお陰で戻ってこれた。だからもう泣かないでおくれ、凛。」

「・・・はい。」

愛しい人が自分の名を呼んでくれる。紫苑の肩に顔を埋めてしがみつくと、花湯の香りがふわっと舞い上がって、早く鳴っていた心臓の音を幾分和らげてくれる。

「紫苑様」

「どうした?」

「おかえりなさいませ。」

「・・・ただいま、凛。」

広い胸板に寄りかかって甘い花湯に浸っていると、寝台で睦み合っている時間を彷彿させる。現に凛が刺激していた紫苑の象徴は身体の中心で堂々と存在を主張している。

眩暈をおぼえるほど濃厚な花々の香りに誘われて、凛は紫苑を蕩けた瞳で見上げた。

「こら、凛。そういう顔をするでない。」

凛の見上げる瞳を咎めながらも、紫苑は凛に触れるだけの口付けを贈った。

中心をこんなに猛々しくさせているのに、紫苑が手を伸ばしてこないことが不思議だ。

そういう気分ではないのかもしれないと思いつつ、他の事が頭をよぎる。

もしかしたら夢の使者の術にかかったまま、まだ甘美な夢に囚われているのかもしれないと、急に不安が押し寄せてきたのだ。

「紫苑様・・・どんな夢をご覧になられたのですか?」

「そなたの夢を。」

「私の・・・ですか?」

「そうだ。けれど凛の姿をした妖だった。今のそなたは柔らかく温かい。間違えなく私の凛だ。」

「はい。」

目の前の自分に愛を囁いてくれる紫苑にホッとして、肩の力を抜く。

胸を高鳴らせながら紫苑の頬に唇を寄せると、紫苑の整った眉尻が下がって愛しそうにその目を細めた。










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