夜を待ち遠しく望んでいたと思われたくない。けれど歓喜に身体を震わせて彼を迎え入れれば、そんなことはすぐに紫苑の知るところとなるだろう。
長椅子に座り、星々の顔を窺いながら、静かに蝋燭も灯さず紫苑の帰りを待つ。春は行事が多いため、冬はその準備期間。紫苑は公務が目白押しで、連日夜遅くまで働き詰めだ。
いつもなら、うつらうつらとしてきてしまうが、今日は二度寝してしまったので、体内時計が少し狂っているらしく全く眠気がなかった。
暗がりの部屋から天を見上げ、吉兆を報せる青く強く光る星を見つけて、実りの多い秋になるかもしれないと安堵する。民の笑顔のために星読みの力が役に立つのなら、こんな幸せなことはない。
紫苑に愛される今を幸せに思うけれど、自分が人々にとって何の役にも立てない存在だったら、存在意義を見失ってしまう。自分の力と紫苑の存在が両立するからこそ、今を幸せだと感じるのだ。
生き方に疑問を感じたことはない。天のお告げを読み解き、民の生活のために知恵を授ける。
生まれた時から、そうなることを望まれ、そのために生きてきた。そしてそんな自分を、とても幸福な存在だと思っている。
これ以外の生き方は知らないから、少しだけ冒険をして下界を知りたいという欲求が湧き出してくることがある。そのたびに紫苑に打ち明けてみるのだが、残念ながら、紫苑はその事を快く思っていないようだった。
凛の好奇心を素晴らしいと褒めてくれる紫苑。しかし、下界への興味は受け入れてもらえない。
知らない方が良いのだろうか。前任の星の宮は、好奇心の赴くままに探求しなさいと教えてくれたが、その教え通りに事は運んでいない。
つまり今の生活を幸せだと思いつつも、少しばかり紫苑を振り切って外の世界を知りたいと望んでいる。
紫苑の機嫌が良さそうな時に、粘り強く説いてみようと、凛は輝く星々に誓った。
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朝霧とおる