冷たい何か液体のようなものを秘部に塗り込められて身が竦んだ。
「悪い、まだ冷たかった?」
四つん這いになって多田の方へ腰を突き出すような恥ずかしい格好に頭が逆上せそうになる。側にあったクッションを引き寄せて何となく縋り付く。けれど次の瞬間、その選択が正しかったことを思い知る。
秘部の入口を撫でていた指が一本、隘路を分けて入ってきた。痛いかもと脅されていたから衝撃を覚悟していたが、痛いのではなく妙な圧迫感があった。本来ものを入れる器官ではない。たった一本の指でも下腹部を膨張させるような感覚がした。
「柚乃宮……大丈夫?」
クッションに顔を埋めたまま、首を微かに動かして頷いた。
多田の手がまだ反応していない前を緩々と擦りながら、秘部に突き入れた指を出し入れさせた。始めは怯えから快感を拾うのを抵抗していた身体だったが、前と後ろを同時に責められて、徐々に下半身の力が抜けていく。射精をするために前だけを弄るのとは違った感覚だった。
「……んッ……ハァ、んぅ」
後孔が緩み始めてきたのか、多田が指を足してくる。圧迫感に眉が寄った後、急に目の前が真っ白になるような狂おしい感覚に襲われた。
「ぁああ、や、なに……んッ、やぁ」
「気持ちいい?」
多田の指が前立腺を捉えて、突いて弾く。強制的に射精を促すような快感が苦しくて、パニックになる。
「あぁ、やめ、多田さッ……やッ」
膝がガクッと落ちそうになるのを多田の腕に支えられたが、何とかこの状態から逃げたくて全身でもがく。
「柚乃宮、落ち着いて。イっていいから。ほら出して。」
「ん、いい、の……あ、ヤダ、汚れ……」
この行き過ぎた快楽を我慢する必要はないのだと安心したのも束の間、ソファを汚してしまうと僅かに残っていた理性が気付いて焦る。けれど真っ赤に充血した屹立からはポタポタと蜜が溢れ始め、もう耐えられなくて泣きそうになった。
多田は秘部への抜き差しを繰り返しながら、こちらの意を汲んで脱ぎ散らかした何かをソファベッドに敷いてくれた。
「いいよ、ほら。大丈夫だから。」
「……んぅッ……あああぁぁ」
ホッとした瞬間、太腿と下腹部が戦慄いて精が前へ飛び散った。残滓も搾り取るように萎えかけた性器を多田の手がゆっくりと擦る。
クッションにしがみついて必死に呼吸を整えようとしても吐く息は震えた。自分が酷く卑猥な生き物になった気がして悲しくなる。涙がじわりと滲んできてクッションに染み込んだ。
多田が柚乃宮の様子を察したように手で髪を梳きながら背後から横抱きにする。
「イヤになった?」
「……っく……だって……」
「慣らさないと辛いの柚乃宮だから。もうちょっと俺の為に頑張ってくれる?」
「……?」
多田が密着していた身体をさらに寄せてくる。すると柚乃宮の臀部に多田の硬度を持った熱が当たった。
「柚乃宮の中で出したい……でも、もうムリ?」
本当にちょっとかと聞けば、あと少しだよと掠れた欲のある声で返されて耳元の皮膚が騒めいたような気がした。
多田の腕の中でモゾモゾ動いて振り返る。そして先を促すように、すぐ近くにあった唇に自分の唇を重ねた。
考えてみれば向かい合っていないから自分のあられもない格好を目の当たりにせずに済んでいる。多田の顔が見えないから少し寂しいけれど、柚乃宮が恥ずかしがることを察して気を使ってくれているのかもしれない。
腰を抱えられて、液体を纏った指が再び侵入してくる。身体は抵抗せず、指が去っていこうとするたびに奥が蠢いているような気がした。
多田が抜き差しを繰り返していた指を完全に抜いて、背中にそっと口付けた。
「深呼吸して、力抜いて。」
柚乃宮のペニスの先端を指の腹で擦りながら、多田は自身の昂りを秘部に宛がう。柚乃宮が息を吐いて脱力した頃を見計らって、多田の圧倒的な質量が分け入ってきた。
「……うッ」
痛みが走って力みそうになるのを必死に堪える。
「柚乃宮、前に集中してて。」
優しく、けれど的確に官能を呼ぶように、多田の手は陰嚢と痛みで萎えた竿を揉み込んだ。下半身に血流があっという間に戻ってきて、力んでいた身体が弛緩し始める。
「ふッ、あ……」
柚乃宮の様子を窺うように、少しずつ多田が腰を進めてくる。全部収まった時には、圧迫感に眩暈をおぼえた。
「多田さ、ん……大き、い……」
「どんな感想なんだよ……中、凄い絡み付いてきて・・・もう、イきそう・・・」
多田の声が想像より上擦って、焦っている。こんな風になる多田は初めてで、余裕がないのは自分だけではないのだとわかって嬉しくなった。多田がどんな顔をしているのかわかないのが少し心残りだ。
「柚乃宮、動くよ……」
いつもの多田なら柚乃宮にどうするか形だけでも聞いてくるのに、もうそれすらもなかった。
「……ッ、あぁ……う、んッ」
多田がゆっくりとしたストロークで腰を打ったのは最初の数回だけだった。次第に速く激しくなる律動に柚乃宮の身体は大きく揺さぶられる。
「た、ださ、んッ……あ、おかし、くな……あぁ、あっ」
身体を揺さぶられる衝撃はあっても、痛くはなかった。後孔の中が擦れて熱を持ち、多田の硬い先端が前立腺を突いて、柚乃宮の性器は透明な液を溢す。
質量のある多田のペニスが再び前立腺を捉えて突き始めると、後孔がキュッと多田を締め付ける。
「あぁ、柚乃宮……」
堪らないとばかりに柚乃宮の背に額を付けて、うわ言のように多田が呟く。多田の荒い息が背にいくつも降り注いで、柚乃宮の体温を上げた。
「……あ、多田さッ、イく……あぁ」
「俺も……。いい、よ、柚乃宮、イって……」
粘着質な音とソファのスプリングが撓む音がリビングに響く。多田のペニスの先端が良いところを捉えるたびに身体が跳ねた。刺激は十分過ぎるのに、達したくても透明な液が糸のように垂れていくだけだ。
もどかしくて前を擦ろうと手を伸ばせば、多田が察して一番敏感な先端のくびれを強く擦ってくれた。
「ッん……あ、あ、イく、も……」
「……ッ……いい、よ、ほら。」
ガンッと強く多田の腰が打ち付けられ、奥が抉られるような感覚がした。その瞬間、目の前が真っ白になって、柚乃宮は三度目となる精を吐き出した。
多田の激しい腰使いが衰えず、律動と共に柚乃宮の萎えかけた先から精液がピュルピュルと飛び散る。後孔もつられてヒクつき、多田を締め付ける強さが増した。
「ぁ……柚乃宮ッ」
自分を切なそうに呼ぶ声があまりに色っぽくて皮膚が総毛立つ。そして次の瞬間、身体の奥にじわりと温かいものが広がって、多田が柚乃宮の中にたっぷりと愛液を放って果てた。
「はぁ、ぁ……柚乃宮……好き……」
繋がったまま横抱きにされて、多田が柚乃宮の肩に顔を埋める。荒い呼吸を繰り返したまま掻き抱かれ、胸がキュッと掴まれたように切なく疼いた。
秘部を埋める多田のペニスが間を空けずに膨らんできて、尽きることなく求められている気がして心が満たされる。しかしもう一度なんて言われても、身体が悲鳴をあげていて応えられそうにない。
「多田さん……」
キスがしたくて、多田の腕の中で身じろいで後ろを向くと応えてくれた。
「……ぅん」
多田がゆっくりと腰を引いて硬茎を抜き去る。名残り惜しいと訴えるように内襞が纏わり付こうと蠢いた。
「今これ以上したら、壊しそうだから。一度気絶させるまでしてみたい気もするけど。まぁ、それはおいおい……。」
せっかく幸せな余韻に浸っていたのに、なんて恐ろしい事を言うのだとギョッとして見れば、笑われた。もうすっかりいつもの多田に戻っていて、どういう距離感でいればいいのか少し戸惑う。けれど満ち足りた気分であることに違いなかった。
柚乃宮は身体ごと多田の方に向いてキスを送る。そして多田の下がった目尻を見て、どんな事をされても、多田のことが好きだなと思った。
「多田さん……」
「うん?」
「多田さんの事……とっても好きです。」
「……ありがとう。」
嬉しそうに笑ってくれる多田を見て、言葉にするのは照れるけれど一番確かで大切な事なんだと、柚乃宮は思った。
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