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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

マイ・パートナー15

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マイ・パートナー15

母親に怯えて、取り乱す。夢に見て、悲鳴を上げる……。

 どんな状況で育てばそんな事になってしまうのか、多田には想像が出来なかった。話の流れから虐待を疑っただけで、そうだと肯定されても実感が湧いたわけではない。

 多田自身、平凡な家庭に生まれ特に不自由もなくのびのび育ってしまった。それ故に、そういうものが現実として存在することが俄かに信じ難かった。どこか自分の知らないところで起きている出来事、まさに他人事だったのだ。

 けれど想いを寄せている後輩が辛い目に遭っていた。想いが届かなくても、せめてその人には幸せでいて欲しいと願うものだ。しかし柚乃宮は苦しんでいた。その事が酷く胸を締め付けた。

 柚乃宮は風呂から上がった後、ソファで息を潜め疲れた表情をしていた。心ここにあらずといった顔を見ていると、多田は切なくなった。

 温めていた湯が沸騰して、ケトルが甲高い音を立てる。多田はキッチンで二人分のカップを満たし、柚乃宮のもとへ持っていく。

「何か羽織る?」

 春先は朝晩気温が下がる。カップを渡しながら聞くと、首を横に振って大丈夫ですと答えた。

「何ですかこれ?」

「カモミール。落ち着くよ。」

 柚乃宮は奇妙なものでも見るかのように、カップの中身と多田の顔を見比べた。

「カモミールってハーブですよね。なんか多田さんって、女の人みたい……。」

 柚乃宮が思いのほか柔らかく笑いかけてきたので不意を突かれた。鼓動が少しだけ早く高く打ち始める。多田は恥ずかしくなって、努めて冷静にカップを啜った。神経を宥めるはずの香りが効いてくれない。半ばヤケになりながら香りを吸い込めるだけ吸い込んだ。

 夜は危ない。風呂上がりは気が緩んで更に危なかった。たった三日一緒にいるだけでこうなのだから、この先自分の心臓が持つか自信がない。

 手を伸ばせばそこにいる。笑いかけてくれれば頭は沸騰しそうになる。誤解もしたくなった。上気して赤く火照った?も、無防備に晒された首筋も、触れたくてたまらない。唇を寄せて吸い尽くしてしまいたくなる。

 部屋に柚乃宮がいるかと思うとバスルームでマスターベーションをするのも生々し過ぎる。処理した後、平然と顔を合わせられそうになくて、したくても出来なかった。ダメだと思うのに身体の熱は勝手に上がる。理性を堪えるので精一杯だ。

 思考回路が妙なところに嵌ってしまわないうちに、慌てて邪心に蓋をする。

 こんな事を考えている場合ではない。柚乃宮に寄り添い、解決できるものなら手助けしたいと思っていた理性ある自分を呼び戻した。

 虐待と聞いてから、多田には一つ疑問があった。

 柚乃宮は特別背が高いわけでも、体格ががっちりしているわけでもない。けれど十分身体は大人で、成人男性としても細身とはいえ平均的だ。あんな大人しそうな小柄な女性に力で負けるとは思えない。凶器で脅してくるとか、あるいは精神的なものなのか、その辺りが腑に落ちなかったのだ。もしかしたら、何かこちらの想像していない複雑な事情があるのかもしれない。

「多田さん……聞いてくれますか?」

「……もちろん。聞かせて。」

 一つひとつ言葉を探すように紡がれた話は、柚乃宮の中学時代まで遡った。





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こんにちは。
いつも閲覧いただきまして、ありがとうございます!
日々の励みになっております!!

お盆明け、朝霧は仕事が激務で昇天しかけていますが、
皆様いかがお過ごしでしょうか。

早く過ごしやすい季節になってくれないかなぁ~と思いつつ。。。

コメント欄を解放しておらず、申し訳ありません。
仕事が落ち着きましたら、ツイッターを始めようかと思いますので、
またこちらでコッソリ告知させていただきます。。。(笑)


それでは、また!!

朝霧とおる

 
 
 
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