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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

マイ・パートナー「summer holiday1」

濃い緑の香りが身体全体に染み込んでいく。草木の豊かな高原は、都会の喧騒も暑さも忘れさせてくれる。鳥たちも気怠げな様子がなく、活発に動き回って木々の合間を気持ち良さそうに通り抜けていく。

 八月下旬。残暑の厳しい今年の夏には願ってもいない場所だ。

「健斗、そのまま真っ直ぐ行った先だよ。」

ホテルのフロントで受付を済ませた多田が、建物から出てくる。今日は広大なホテルの敷地内にあるコテージに泊まるらしい。案内は断ったのか、一人で出てきた。

外で二人で過ごしていると、自分が他人からどう見えているのか多少気になってはいた。仕事帰りですら、多田はスーツだが自分はラフな格好だ。誰かにじろじろ見られたことがあるわけではない。けれど多田と同年代でないのは明らかだし、一体どんな関係なのかと疑問に持たれるであろう。その事を気にしてしまう自分も、そんな自分に多田が気付いていそうな事も、なんだか居心地が悪かった。

多田のことを自分の些細な躓きの所為で傷付けていたとしたら悲しい。でもどうにも収まりの悪いこの気持ちにまだ決着を着けることは出来ていなかった。

多田がプライベートで柚乃宮のことを名前で呼ぶようになってから、だいぶ経った。一方で柚乃宮の方は職場でうっかりやらかすのが怖くて、呼び方は変えていない。多田は何も言わないし不都合もないので、そのままでいいかと最近は思っている。

芝生の上を歩くのは久々で、虫の羽音や草木の風に靡く音が耳に心地良い。視界の先にはテニスコートがあって小気味いいリズムでラリーが繰り広げられていた。

「あ、ここみたいですよ、多田さん。」

少し後ろを歩く多田に声を掛ける。ルームキーの番号と一致するコテージを見つけたのだ。

作りがヨーロッパ風の豪勢なリゾートホテルだったので、コテージもそんな風だったら落ち着かないなと思っていたが、こじんまりとした風情のある建物で安心した。建物のすぐ側には煉瓦で作られたコンロがあって、バーベキューも出来るようだった。

「いつもここか隣りなんだよ。テニスコートの近くにしてくれって言うとそうなる。」

「もしかして毎年来てるんですか?」

「そう。大抵は従兄弟と二人で。歳も同じでね。親戚で結婚してないのがそこだけだったから肩身が狭い者同士仲が良くて。」

「今年は振っちゃったんですか?」

「去年結婚したから、先に振られたのは俺。」

親戚とか従兄弟という響きが柚乃宮には新鮮だった。祖父母も早く亡くなっていて、母にも自分にも兄弟がいない。そういうものとは無縁だった。作ろうと思って作れる縁ではないから、素直に羨ましいと思う。

ルームキーで扉を開けると、木の香りが部屋を満たしていた。

「失くすといけないから、鍵とレストランのチケットはここな。」

バーベキュー用のコンロがあるからてっきり夕飯はそうなのかと思って聞いたら違うらしい。朝食券と夕食券を多田がテーブルに置いた。

「夜バーベキューやると、虫が凄くて。蚊だけじゃなくて、アブとかブヨもいるから刺されると悲惨だからね。防虫スプレーつけてても食われるから。」

「だから長袖持ってこいって言ったんですか?」

「まぁ、それもある。夜移動する時は上も下もあまり出さない方が良いよ。あと、朝晩冷えるから、寝る時も。」

言われた通り持ってきて良かった。虫は特段苦手ではないが、痒いのや痛いのは勘弁してほしい。

早速二人でテニスコートに向かうべくスポーツウェアに着替えた。




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こんにちは!
まだまだ暑い日が続きますね。
ということで、番外編突入です。
二人にもちょっと遅めの夏休み、ということで。
ひたすら、いちゃいちゃしていただきます(笑)

いつも閲覧いただきまして、ありがとうございます!
番外編から先もノンストップで次回作へ移りたいと思います。
また、お付き合いいただければ幸いです!

それでは、また!!



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