経験したことのない圧迫感と、目の前で星が散るほどの強烈な快感。宙に投げ出されるような勢いで揺さぶられ、自分の身体ではなくなってしまったかと思った。
最後に聞いたのは宮小路の呻く声。甘く深い息を永井の胸に落として、その刺激にすら身体を震わせ、永井は力果ててしまった。
人前であんなに泣き散らし、はしたない姿を晒したのは記憶がある限り初めてだ。しかも衝撃的な記憶を最後に意識は途切れ、腰の鈍痛が目覚めを呼ぶという、かつてない朝を迎えていた。
明るい光を瞼越しに感じていたが、永井は羞恥心に勝てず、どうしても目が開けられない。
宮小路の手は繰り返し永井の髪を梳いていたが、それだけでは飽き足らなくなったらしい。頬を撫で、口付けて、首や胸元を弄っていく。
「んッ、ふぅ……」
「永井さん」
下手な狸寝入りを揶揄うような手と唇。宮小路に遊ばれて、永井は過剰な反応を示してしまう。次の一手を待ち構え身体を固くしている時点で、起きていることはバレバレだろう。
「そのままでも可愛いですから、私は一向に構いませんよ。」
愉しげに頭上で笑う宮小路に、永井はようやく観念して重い瞼を開く。開いて初めて気付いたが、泣き腫らした目は空気を敏感に拾い、ヒリヒリと微かに痛みを生んだ。
「永井さん、お目覚めですか?」
満面の笑みを浮かべ、上機嫌であることを隠さない宮小路に、永井は居た堪れなくて碌に目も合わせることができない。
上等なタオルに包まれて、永井の腰はベッドからふわりと浮き上がる。宮小路の手は重力を感じさせないほど、軽々と永井を抱えてしまった。同じ男として劣等感をおぼえずにはいられないが、下半身の強烈な違和感は、抵抗する気力を永井から奪っていた。
「永井さんに乱暴しましたから、傷がないか診ましょうね。」
宮小路が永井の身体を貫いた時、裂けるような痛みを感じたわけではない。強烈な腹部への圧迫感と、次第に駆け上がっていく熱に翻弄されていただけだ。
「あの、大丈夫、です……」
普通に話したつもりだったが、声はかすれ、ちっとも声量がなかった。あられのない格好に焦り、もう一度口を開く。しかし言い終える前に彼の唇に塞がれてしまった。
「お喋りは控えないと。あなたの可愛い囀りが聴けなくなってしまったら大変だ。」
自分の声が美声だと思ったことは一度もない。逐一言う事がオーバーだと呆れつつ、いつの間にか黙って受け入れている自分に気付く。慣れとは怖いものだ。
「さぁ、ちゃんと見せてくださいね。」
再び後ろ向きで腰を高く抱えられると、随分と卑猥な触診と視診が始まってしまう。
「みや、こ、じ、さッ」
「永井さん。ほら、お喋りはダメですよ。可愛い声が潰れてしまったら、どうするんですか。」
畏まって見るところでもない。真剣な眼差しに否は言えなかったが、内心火が噴きそうなほど恥ずかしい。
「少し赤いですが、傷にはなっていないようですね。良かった。」
「ッ……」
宮小路の言葉にようやく解放されると思ったのも束の間、お尻に柔らかいものが当たる。
「ッ……?」
「真っ白で柔らかい。最高だ。」
チュッと大きな音を立てて吸い付いてくるので、ついに羞恥心が限界値を超えてしまう。
「やめ……ふッ……う……」
「え、わッ、永井さん!?」
いい大人が突然泣き始めれば誰だって焦るだろう。自分の涙に自分でも戸惑ったが、これでもかと溢れ出て止まってくれない。
「永井さん、泣かないで。調子に乗り過ぎました。ね、永井さん。泣き止んでください。」
この男も困ることがあるのだ。宮小路の慌てふためく様子に溜飲を下げる。どうやら自分は不本意な行為に腹を立てていたらしい。昨夜、散々違う意味で泣かされたから、すでに目の周りは腫れぼったい。
少しくらい我儘を言おうと永井が目のアフターケアを要求すると、宮小路が意外そうに目を見開き微笑む。ささやかな要求は宮小路をただ喜ばせただけだった。
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朝霧とおる