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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

宮小路社長と永井さん『アクアリウム』27

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宮小路社長と永井さん『アクアリウム』27

金曜日に紡績工場への見学を当てたのは、もちろん永井を週末囲うためだ。鎌田の小言が飛んでくるかと思っていたが、口を出す気はないらしく不気味なほどあっさりしている。

「まぁ、変な子ではなさそうだ。」

「当たり前だ。彼は純真さの塊だよ。凄く可愛い。」

「惚気なんざ聞きたくもない。調べた限り浮いた話はないな。ただ家族構成が……」

「待った。報告はいらない。そういう事は本人から聞く。」

手にしていた書類を宮小路に出しかけて、鎌田は手を引っ込めた。調べた以上、報告したいということなのだろうが、本人の預かり知らぬところでコソコソ手を回すのは悪い事をしているようで落ち着かない。永井が宮小路に信頼を寄せ、より深く理解し合う過程で本人の口から教えてほしい。

「もうすっかりご執心だな。」

呆れたように鎌田が自分の席へ戻っていく。

「類稀なる純粋さだ。」

なかなか心を預けてはくれないじれったさも宮小路をそそる材料でしかない。

「叩けば埃だらけのおまえを基準にするなよ。」

「鎌田、社長になんて言い草だ。」

「今は幼馴染として事実を言ったまでだ。とにかく右側の書類は片付けていけよ。昨日サボったんだから。」

「わかったよ。」

鎌田に応酬せず、すぐデスクへ向かったのは、下半期の大型案件が本格的に始動したからだ。永井に任せている仕事は金額の規模としては小さい方で、グループ本社から振り分けられた仕事が列を成して待ち構えている。

「宮小路。おまえの兄貴からメールが届いてる。自分で見ろ。」

「どうせ顔合わせの件だ。俺に構わず決めればいいものを……」

「弟のおまえが行かないんじゃ、家族の顔合わせにならないだろ。」

「会えば、結婚だなんだと煩いし、絶対に見合い話もセットだ。」

「逃げても大差ないと思うぞ。」

古風な考えを持つ両親に自分の性癖は明かせていない。そもそも明かす必要性も感じない。兄二人も結婚が早いとは言えず、ごちゃごちゃ揉めていたので、便乗して雲隠れしていたが、この一年で二人が収まるところに収まってしまったのだ。当然矛先は残された自分へ向くだろう。

渋々届いたメールを開封すると、決定事項として日時と場所が記されていた。永井と睦み合おうと画策していた週末を潰される事実が判明して歯をくいしばる。しかしふと頭をよぎった案が良案に思えて、宮小路は即座に口端を上げた。

「鎌田」

「何だ?」

「良い事を思い付いた。」

「おまえの思い付きは碌な事がない。断る。」

「いやいや。力を借りるほどのことじゃない。」

宮小路を一瞥した後、鎌田は大仰な溜息をつく。結局言ってみろと聞く耳を持ってくれるのは、兄貴肌の鎌田らしい面倒見の良さだ。

作戦を告げると、鎌田から書類で頭を叩かれる。しかし小言を繰り出しながら宮小路の馬鹿さ加減を諦めたように笑い、最後には好きにすればいいと頷いた。









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