永井の腹部や胸部に欲望を撒き散らして息をつく。不思議そうに散った二人分の白濁を眺めるものだから、その初々しさに危うく煽られそうになった。
この征服感は強烈な毒だ。どさくさに紛れて秘部を弄ると進もうとする宮小路の指を押し戻してくるので、すぐに手を引いた。初めての身体に己の楔を刻み込むような真似をすれば、匂わせた昨夜の行為が嘘だと簡単にバレてしまう。本当のことを打ち明けるには、まだ早い。
「あ……」
永井の上半身を起こすと、宮小路の放ったものが腹部を垂れて下方へ向かっていく。その感覚に赤面して打ち震える永井が可愛くて、揶揄いたくなる気持ちを抑えるのは一苦労だった。
「こんなにたくさん出してくださって嬉しいですよ。乱れるあなたも最高に可愛い。」
蒸気でも上がりそうなくらい永井が耳まで赤くして俯く。目を合わそうと顔を覗き込むと、永井の視線は恥ずかしそうに逃げていった。
サイドデスクのタオルへ手を伸ばすと、宮小路の象徴はこの先を望むように視界の中央で揺れる。永井から見咎められる前に隠してから、永井の身体に散った二人分の飛沫を綺麗に拭った。
「永井さん。少しはお付き合いのこと考えてくださいました?」
「ッ……」
「私はあなたとセックスフレンドになりたいわけではありません。毎晩あなたをベッドの中で可愛がりたいのは確かですけどね。あなたの事が沢山知りたい。永井さんは?」
「私は……」
俯いて翳る意味を知りたい。プレイボーイだと警戒されているなら最悪だが、信用を勝ち取るまで辛抱強く誠意を見せるしかない。
「お昼はお互いを知る絶好の機会だと思います。あのカフェへ、毎日会いに行くことを許してくださいますか?」
迷った挙句の小さな肯定。仕事の進捗状況の確認もできると食い下がったことが一番効果的だったようだ。仕事を口実にしたがるのは、あまり良い傾向とは言えない。好意を向けられている実感はあるのに、言動が伴わない理由がわからなかった。
「永井さん、好きです。私では役不足ですか?」
「……逆です。私なんかじゃ……」
「永井さんは随分ご自身を過小評価されているようですね。そんな慎ましいところもあなたの魅力ですけど。」
『アクアリウム』の女性店員が、すれ違う街行く人々が、永井に向ける目は色めき立っている。彼の純粋さが長い間破られなかったのは、近付きがたい高潔さが彼を纏い守ってきたからだろう。
腕の中に永井を閉じ込めると、永井の額が宮小路の胸に擦り寄ってくる。控えめな求愛に、せっかく彼の視界から隠した宮小路の象徴は勢いを吹き返してしまった。昂りに気付いたらしい永井は身体を硬直させたが、今こそ堪え時だと耐えた自分に賛辞を送る。
「明日から永井さんにはフル稼働していただかなくてはなりませんから。今夜は鋭気を養いましょう。ぐっすり眠ってください。」
我ながら完璧だと悦に浸っていると、信頼の証とばかりに遠慮がちな手が宮小路に抱きついてくる。自分だけの天使だと浮かれたのは、全く大袈裟ではない。
宮小路は永井が脱力して寝入った後も、長い睫毛と白い肌に魅入られていた。
いつもご覧いただきまして、ありがとうございます!!
↓ 応援代わりに押していただけたら励みになります!
にほんブログ村
B L ♂ U N I O N
Twitter
@AsagiriToru
朝霧とおる