こんな愉悦は知らない。とても昨晩この身に刻んだ快楽だとは思えず、翻弄されるがままに熱を放つ。一度出しても身体に籠る熱は上がるばかりで、悩ましい疼きは消えることがなかった。
力を失った全身が湯から引き上げられ、わななく足で立つ。
人がセックスに溺れることをどこか他人事のように思っていたが、今ならわかる。こんなにも身体を湧き立たせて欲望を引きずり出すものなのだ。たった一度、禁断の果実を食べるだけで戻れなくなるというのは真実だろう。
触れられると、触れたくなるものらしい。初めておぼえた確かな欲求に戸惑うばかりで、縋るように身体を宮小路に預けながら手を伸ばしてみる。
赤黒く漲っているというのに、その凶暴さを押し付けてくる気配はなかったので、恐怖心はなかった。遮られると思ったが、宮小路は永井の好きなように触れさせてくれる。
宮小路の息が上がる。その姿に感動をおぼえたのは、自分にも彼に与えられるものがあるのだと錯覚できたからだ。
この手で高めてみたいという夢は宮小路からのキスで阻まれる。弾力と包容力のある唇は永井の頭を空っぽにして、身体からあらゆる力を奪っていった。
「永井さん。ベッドで素晴らしい夜にしましょう。」
バスローブで永井を包むと、宮小路の腕に抱え上げられて、どこぞの姫君のように丁寧に広々としたベッドへ降ろされた。シーツの張りは上等であることが明らかで、広さも男二人が寝転んでも余りある。呆然としていると、宮小路は包むように被さってきた。
「バスローブ、便利でしょう?」
「ッ……」
「あなたを湯冷めさせず、すぐ抱ける。」
水滴はバスローブに吸い込まれて、すっかり跡形もない。しかし前の紐を結わえていたわけではなかったので、肌は露わになり、永井の象徴もバスローブの合間から溢れていた。
「明日、永井さんにつらい思いをさせるわけにはいきませんから、気持ち良いことだけしましょう?」
密着してきた宮小路が、チロチロと舌を這わせて永井の肌を遊ぶ。直接触れているわけではないのに永井の象徴は奮い立って、素直に歓びを示した。
恥ずかしくて目を固く瞑っていたが、宥めるようなキスが頬に繰り返し落ちてきたので、勇気を振り絞って瞼を開く。するとこちらの様子をずっと窺っていたのか、胸の飾りを口へ含もうと企む宮小路と目が合ってしまう。
「あッ……んんッ……」
口を開いた途端に後悔する。こんな甘ったるい喘ぎ声を自分が発したのかと思うと、恥ずかしいを通り越して血の気が引いてしまう。みっともない声などこの男に聴かせたくないと手を噛んでいると、宮小路が永井の胸部で頬擦りをして嬉しそうに笑う。
「永井さん、聴かせて。あなたが喘いで鳴く声が聴きたい。」
小鳥の囀りとはわけが違う。男の嬌声を聴いて何が楽しいのかと思うが、永井の手を掴んで口の覆いを取り払ってしまう。
急に下肢へ興味を示した宮小路が何をしたのか、最初はわからなかった。
「やッ、みやこ、じ、さ……あぁッ」
温かい粘膜が永井の象徴を抱擁する。吸われて扱かれると、永井の不慣れな性器はすぐに息を吹き返し芯を持った。刺激の強さに目の前で光が点滅し、やめてほしいと訴えたくても唇が震えるだけで言葉にならない。弱点を知り尽くしたかのような宮小路の舌。彼の蜜技に翻弄されて、抗う術もわからないまま永井は悶える。
「あ、ああッ、ん、うッ、ふぅ……」
官能的な舌が急に去って、大きく息を吐き出す。疼いて仕方なかったが、頬に温かいものが伝って、初めて自分が泣いていることに気付く。
「どこもかしこも綺麗だ。ここも清楚なピンク色で、私を誘うんですね。」
そんな事はないと反論するより前に、猛々しい赤黒く漲った宮小路の性器が永井の象徴に寄り添う。彼が二人分を手に収めて扱き始めたので、昂りが直に肌を伝ってきた。
「真っ白で、初々しくて……永井さん、我慢しないで。ほら。」
迫り上がってきた熱が蜜袋を緊張させて、呆気なく果てようと限界を告げてくる。
「あッ、んんッ……や、こうじ、さッ」
身をよじって耐えようとしたが、片腕を捕えられたまま叶わない。
「う、うッ、んんッ、ふ……ん、ああぁッ」
訳も分からないまま駆け上って、白濁を放つ。一度精を通していた永井の象徴は、堪え性がなく、勢いよく白濁を噴き出していく。
「あ、あぁ、や……」
身悶えて吐精していると、宮小路が永井の足を抱え上げ、閉じた両腿の間に己の象徴を突き入れる。
「永井さん、今夜はここを貸してください。」
良いとも悪いとも返答する前に宮小路が腰を揺すって律動を始める。萎んだ永井の象徴にも擦れて、敏感な肌は驚いて震えた。そして熱い視線を逸らしもしない宮小路に、目が釘付けになる。
「永井さん、そのまま……ずっと、見ていてください。」
「ッ……」
宮小路が汗を滴らせ腰を振る姿に、彼の興奮を感じ取って胸が締め付けられる。求められる昂揚感と充足感に襲われて、生まれて初めて感じる胸の苦しさに戸惑うばかりだ。
しかし吸い込まれるように宮小路の目を見つめたまま、彼が絶頂を迎える瞬間まで永井は見届けた。
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朝霧とおる