一緒にベッドへと潜り込んで、紳助の香りを胸いっぱいに吸い込む。今日はいつもの匂いにお酒が混じって、触れ合った肌はいつもより体温が高く感じる。
「結構、飲んでたね。」
「でも付き合いがある時はあれぐらい飲むぞ?」
「そうなの?」
お酒が強いのも知っているし、顔色も悪くはないけれど、それでもやはり心配になってしまう。飲み過ぎて身体を壊したりしないかと。
お酒が進んでくると、あまりご飯も口にしなくなるから、なおさら心配だ。
「もうちょっとだけ・・・」
「うん?」
「控えて・・・ほしいな。」
効果があるかはわからないけれど、引き締まった彼の腹部をつまんでみる。しかし残念ながら見た通り脂肪とは無縁なお腹だったため、たいして掴むことはできなかった。
「わかった。ほどほどにするよ。」
笑いながら言われて、なんだか悔しい。こっちは本気で心配しているというのに。彼が強靭だとしても限界点は必ずあるはずで、仕事の疲労がある上にお酒が入って注意力が散漫になり、貰い事故をしたりするかもしれない。
自分を大事にしてくれるように、彼自身のことをもっと労ってほしい。
悶々と考えていると、うっかり動いていた手をやんわりと掴まれる。
「なに人の毛で遊んでんだよ。」
「ぁ・・・いや・・・」
本当にうっかり。無意識に紳助の下半身に手を伸ばして、指先で遊んでいた。
「今日はしないんじゃなかったのか?」
「勃ってるね・・・」
「しょうがないだろ?」
掴まれて静止していた手を、ゆっくりとした動作で紳助の分身に伸ばしてみる。
「おい、恵一。」
紳助の声は咎めるようなものではなかった。
夜遅くまで騒いで疲労困憊だと思っていたけれど、触れたいと思ったら止まらなくなるものだな、と頭の片隅で思う。
「気持ちい?」
「気持ちいいよ。」
肩口に落ちてきた紳助の吐息が熱い。呼吸はさほど乱れていなくても、密着して伝わってくる心臓の音は少し早くなった。
別に身体を繋げて貪り合うだけがセックスじゃない。相手の反応を手の中にじっくり感じて、紳助の鼓動の早さを確かめるのも愛し合う行為の一つだと思う。
多分いつもなら紳助に組み敷かれるところだと思うけれど、今日の紳助は緩慢だった。肌が触れ合うくらいに寄り添って、恵一の手の中で分身を愛撫される心地良さに、うっとりと浸っている気配がする。
獣のような、ちょっとした乱暴さで抱かれるのも好きだけれど、時々はこういう穏やかな空気の中で紳助が身体を熱くしていくのを見るのもいいものだなと思う。こんな自由に触れさせてくれることが、紳助にしては珍しいからだ。
「恵一」
気持ち良さそうな紳助を見ていると、自分も気持ちが良い。とても不思議だ。刺激されているわけでもないのに。
かすれた低音で名前を呼ばれて、こちらも熱くなる。スローモーションのように、ゆっくりとキスを繰り返しているうちに、紳助が眉を微かに寄せた。
「ッ・・・ん・・・」
呼吸が少し乱れたと同時に、手に熱い飛沫を感じる。鎮まったのを確かめて、ティッシュで拭っていった。
随分静かだなと顔を窺うと、目を瞑って開ける気配がない。規則正しく聞こえてきた呼吸の音で、紳助が寝入ってしまったことに気付く。
「紳助も、寝落ちとかするんだ・・・」
彼に対して可愛いという単語が思い浮かんだのは、初めてかもしれない。
気持ち良さそうな寝息を聴いて、彼の疲労度合いが気になってしまう。紳助が自身を大切にしてくれないなら、自分がその分、心を配れば良いということにしよう。
「やっぱり、ホンモノが一番だな。」
離れてみて、骨身にしみた。そして腕の中に戻ってみて確信する。
恵一は紳助の肩口に顔を埋めて、寝入るまで彼の香りを堪能した。
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番外編、お付き合いいただきまして、ありがとうございました!
本日18時に新作のお知らせをさせていただきます。
いつものごとく内容の見えない予告ですが(笑)、
明日0時から本編はスタートいたしますので、
また足を運んでいただけると嬉しいです!
それでは!
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朝霧とおる