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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

あなたの香り13

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あなたの香り13

紳助から自分と同じ香りがする。揺さぶられながら彼の首元に顔を埋めて何度も確かめる。

「し・・・ん、すけッ・・・ぁ・・・ん・・・」

気持ちの良いところを何度も突かれて、目がチカチカとしてくる。シャワーで落としきれていなかった残り香と汗の匂い。肌が騒めくほど嗅覚を刺激してくる。

けれど唐突に慣れ親しんだ香りだと気付いて、体温が急激に上昇した。

交わる時に紳助の身体から感じる匂い。シャワーを浴びたから薄れているけれど、自分があげたコロンが紳助の愛用品と似ている香りだと気付いてしまう。彼がいつもまとう香りに近しい物を無意識に選んで贈っていたのだとしたら、なんだか居た堪れない。

恥ずかしくなって紳助にしがみつく。

「ッ・・・恵一?」

「・・・んッ・・・ん・・・」

どうしよう。自分が気付いたくらいだから、聡い紳助はとっくに気付いていただろう。

恋しくて仕方ないと言っているようなものではないか。

しかし悶絶しているヒマもないほど、紳助が送り込んでくる熱量が増してきて、息が切れる。気持ち良くて、感情がどこかへ飛んでいってしまいそうだった。

「あ・・・ん、すけ・・・ッ・・・はぁ・・・」

激しくなっていく一方の抽送に、恥ずかしがる余裕は微塵も残っていなかった。

「・・・あッ・・・あぁ・・・あ、もうッ」

「恵一。何考えてた?」

「やッ・・・なに、も・・・」

「ッ・・・よそ見してた、だろ?」

「して、な・・・あッ」

二人の間で蜜を溢している分身を、紳助の手が戒める。

「ん・・・や、やだぁ・・・」

「何、考えた?」

「ッ・・・んッ・・・」

快感の吐き出し口を塞き止められるのは、気のやり場がなくなって心底困る。達したい気持ちがすぐに勝って、あっという間に羞恥心はどこかへ飛んでいった。

「にお、い・・・」

「匂い? ああ、そういうこと。」

ほら、やっぱりわかっていた。

ご満悦な笑みを溢した後、すぐに紳助は戒めていた手を擦り上げる手に変えた。

「ふぁ・・・あッ・・・」

情緒もへったくれもなく、すぐに紳助の手の合間から白濁の蜜が散っていく。

「ッ・・・ん・・・」

快感の波に投げ出されたまま、頭上で紳助が呻く声を聞く。壮絶に色っぽい喉の鳴る音を聞いて、こんな時まで様になるなんてズルいなと思ってしまう。みっともなく喘いで泣く自分とは大違いだ。

気怠い身体を休ませるヒマもなく、紳助が敏感な肌を吸い上げてくる。

「ッ・・・し・・・す、け・・・」

力のこもらない手で形だけ抵抗してみる。しかし紳助は不敵な笑みを浮かべるだけだった。

「おまえが可愛いことしてくれたから、こっちは抱きたくてたまんなかったんだよ。これで終わりだなんて言うなよ?」

攻撃的な言葉とは裏腹に優しく包み込まれるように抱き締めてくる。こんな風に優しくするなんて反則だと思う。抗う気はすぐに削がれてしまう。

「なんで・・・教えて、くれなかったの?」

「俺だけわかってればいい事だろ?」

「ッ・・・趣味、悪いッ・・・ん・・・」

「おまえは俺のもんだってわかったから、最高に気分いいね。」

達したばかりの分身を、また大きな掌に包み込まれて息を詰める。気が狂いそうなほど気持ちいい。やめてと言ったところで、再び兆してきた分身を前に、紳助が手を止めてくれるとは思えない。

「いじわる、しないでよ・・・」

紳助の首に腕を回して、涙目で願う。本心からの願いだけれど、少しばかり必死さを盛ってみる。何年も抱かれてきて、繕える演技がこれだけというのが情けないが、久々に抱き合うのだから意地悪はされたくない。

「だったら集中してろよ。こんだけ待たされて気そらされたら、キレそうになる。」

甘える作戦は成功したみたい。

不穏な事を言いながらも、紳助の弄る手は優しい。長くスラリと綺麗な指に翻弄されて、また熱のこもった行為に二人で没頭した。

 * * *
隣りで規則正しい寝息を立てる紳助の顔を飽きる事なく見つめる。

完全なる時差ボケで目が覚めてしまったのだ。

人肌を感じながら眠ることに飢えていたから、ぬくもりを思う存分堪能する。紳助が目を覚ましていたら、こんな落ち着いて味わうことなどできない。胸が高鳴ってしまって落ち着くどころではなくなるだろう。

身体は怠いし、あちこち鈍い痛みが走る。しかしそれこそ二人で交わった証なので、嬉しいとさえ思ってしまうのだ。

コロンの香りで寂しさをまぎらわす事ができていたなんて今思えば不思議だ。本物の威力には敵わない。

抱き締められた腕の中で、胸いっぱいに紳助の匂いを吸い込む。安心したり、官能をくすぐられたりする不思議な匂いだ。

家に辿り着いた時点でリラックスしている気になっていたけれど、紳助の姿が目に飛び込んできた時の力の抜け方とは全く違う。スイッチが入るのもオフになるのも紳助次第。困った体質に笑うしかない。

「紳助、好き。」

相当熟睡しているらしく、珍しく何の応答もない。頬や唇を指先でつまんでみても同様だった。

昔よりためらうことなく好意を口にできるようになり、年月の分だけ変化はちゃんとある。それだけ紳助の気持ちの真剣さを汲み取って、安心できるだけの心の余裕ができたのだ。

もっと年月を重ねたら、盛大にケンカをしたりする日が来るんだろうか。歩が愚痴をこぼすたびに、少しだけその関係性が羨ましくて。

紳助がもっと感情的になるところを見てみたい。怖いもの見たさに近いものはあるけれど。

忙しない朝が来るまでには、だいぶ時間がある。

「目だけ瞑ってようかな・・・」

瞼を閉じて、肌を伝ってくる体温と鼻をかすめていく匂いが鮮明になる。抱きついて深呼吸を繰り返していると、いつの間にか夢の中へおちていった。













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