恵一がすでに帰っていると思ったら、居ても立ってもいられなくなる。自分で自覚するより寂しかったのだと認めざるを得ない。
セキュリティが万全のマンションに帰り着いて、ドアを開けると、出迎えたのは静寂。
しかし電気はいたるところでつけられて、知っている人間の気配がした。紛れもなく自分の恋人である彼の気配。
リビングにはスーツケースが開けっ放しで散らかり放題。ソファには待ち望んでいた愛しい塊が静かに寝入っていた。
時差ボケか、あるいはこの二ヶ月分の疲れが一気に襲ってきたのか、紳助がそばに寄っても身動き一つせず、安らかな寝息を立てている。
「恵一」
「ん・・・」
「恵一、おかえり。」
彼が風呂に入った形跡はない。それを確認すると、眠ったまま抱き上げて、風呂場へ直行した。
身ぐるみ剥がされて、さすがに冷気が肌を撫でたのか、薄っすら恵一が目を開ける。
「おかえり」
もう一度囁いて口付けると、至極満足そうにする。そのまま抱え上げて泡風呂へ浸かると、ようやく夢から覚めたようで驚いた顔をした。
「紳助・・・」
絶句している。いい顔だ。
湯の中で身体を温めながら、細かい泡で恵一の肌を撫でていく。
恵一の首元へ鼻を寄せると、あの香水の香りがする。自分と同じ香りをまとって帰ってきた恋人に気分が上がるのも仕方ないことだった。
「ぁ・・・待って、紳助・・・」
「洗ってるだけだろ?」
「ウソ・・・触り方、変!」
肌に触れればそれだけで官能が呼び覚まされるらしい。そうやって教え込んだのは他でもない自分だ。
「疲れてたんじゃないのか? 元気だなココ。」
「あ、ヤダッ」
反応した分身を探し当てて揉み込むと、水の跳ねる音と共に身体が湯の中で跳ねて、再び紳助の上に収まる。
「ヤダ、紳助ッ・・・ちゃんと、して。ベッド、が、いい・・・」
緩く擦ると泣きそうな声で訴えてくる。
「ベッドでもするよ。でも、後でな。」
そう言うと、啜り泣いて胸に頭を押し付けてくる。不規則で乱れた呼吸が、恵一の切羽詰まった状態を教えてくれた。
「や・・・紳助・・・出ちゃう・・・」
「随分早いんだな。あっちで、自分でしなかったのか?」
「ん・・・んッ・・・ぁ、もう、やだぁ・・・」
バスルームにこだまする甘い叫び声があまりに必死で胸を突く。痛いくらい愛しい甘美な声。
その愛しさに免じて、絡めていた指の手技を緩める。
「ぁ・・・ん・・・」
駈け上がりそうになった熱をなんとか収めようと身体を震わせる恵一を抱き上げて湯から上がる。
「恵一、おかえり。」
「ただいま・・・ッ・・・ん」
この二ヶ月足りていなかった熱を取り戻すように、互いの唇を貪る。
先に土産話でも聞いてやったほうが良かったのか。けれどあんな無防備に寝ている恵一も悪い。とって食えと言っているようなものだ。
思う存分、恵一の唇を堪能しながら、丁寧に洗い清めていく。
「起こしてくれれば良かったのに・・・」
「ぐっすり眠ってたから可哀想で。」
「ウソつき。襲ったくせに。」
「久々の再会で寝てるおまえが悪い。」
「・・・。」
「ベッドなら文句ない?」
「・・・うん。」
なんだか不服そうに口を尖らせているけれど、染まった頬は誤魔化せない。
湯の玉を肌から拭い去って、少し強引に手を引いていく。大人しく従った恵一を、そのままベッドへ押し倒した。
* * *
綺麗な足の形を確かめながら、舌で味わっていく。恵一に食らいついているような感覚に鳥肌が立つほど興奮をおぼえる。
「ヤダ・・・紳助、ちゃんと・・・ちゃんと、触ってよ・・・」
抱え上げた足の根元で揺れる分身が上を向いて主張する。
「ちゃんとしてるだろ?」
昂ぶる分身に触れてほしいと熱のこもった瞳で訴えられると、こちらも我慢がきかない。
口の中へ分身を含み舌で転がすだけで、困ったように泣く。感覚がいつもより鋭敏だ。
「ぁ・・・ん、すけッ・・・あ、くる・・・や・・・吸っちゃ、やだぁ・・・」
「・・・ん・・・ふッ・・・」
口ではイヤだと言いながら、身体は雄弁だ。気持ち良さそうに紳助の与える行為を受け止めて、高まっていこうとする。
触れるのは二ヶ月ぶり。駆け足なのは仕方ないだろう。いつもより早い絶頂の予感に、恵一が震え始める。
「あ、イく・・・し・・・すけ、いい? ダメ・・・もうッ」
返事の代わりに唇で硬茎を強く擦ってやると、呆気なく熱い飛沫を放つ。
「んッ・・・う・・・ん・・・ぁ・・・」
気持ち良さそうな、うっとりとした声。恵一の口から漏れ出る甘い息に、紳助も下半身が刺激される。
秘部に触れると、その先の行為を期待するかのように恵一が潤んだ瞳で見つめてくる。
「欲しい?」
欲しいと言わせたい。
「ん・・・ほ、し・・・」
喘いでかすれた声が素直に強請ってくる。必死に息を整えて紡いだ言葉に胸を掴まれる。
「紳助・・・」
「うん?」
「会いたかった・・・」
離すまいと抱きついてきて、咄嗟に身動きが取れなくなる。
「俺ね・・・寂しかったみたい。」
「そうか。」
「日記見たら、きっと紳助笑うよ。」
「笑わない。」
「・・・。」
「俺は笑わないよ。」
恵一の身体から力が抜けていく。楽しくやっている、勉強になっていると言いながらも、きっと常に緊張の糸は解けていなかったに違いない。
ホッとしたのか、感情が振り切れたのか、恵一の瞳から熱い滴が溢れはじめる。そっと抱き締めると、続きを強請るように四肢を絡めてきた。
涙を舌ですくい取りながら、久々の行為に強張りかけた身体を宥めて一つになる。
自分の下で満足そうに息を吐き出す恵一を見て、ようやく彼がこの腕に帰ってきたのだと紳助は実感した。
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朝霧とおる