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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

この雨が通り過ぎるまでに50

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この雨が通り過ぎるまでに50

辿り着いた週末がこんなにも心躍るのは入社以来初かもしれない。顔が悦びで緩まないように顔面に気合いを入れ直していると、フロアの入口で宇津井がひらひらと手を振って坂口を呼ぶ。

「夜、ヒマ?」

「今日?」

「用事ある?」

「悪い、今日はちょっと・・・。」

先約があると立ち上がりながら言い掛けて、目に飛び込んできた姿にギョッとする。

「だってさ、瀬戸。二人で飲み行こっか。」

「はい。」

宇津井の長身に隠れて姿の見えなかった瀬戸が顔を出す。先約の相手はもちろん瀬戸だったが、どうやら彼は坂口との約束をなかった事にして宇津井に付き合うらしい。

「瀬戸?」

戸惑ってつい声を上げるが、さすがにそれ以上の言葉を続けることはできず、何故そんな事になったのかと目で問う。

「宇津井さんが、キャンペーンで出す柔軟剤の広告、案を練ろうって。」

「前から行ってみたかった店の個室取ったから、坂口もどうかなって思ったんだけど。ま、先約あるならしょうがないな。じゃ、また今度。」

「ちょ、ちょっと待て。俺も行く。」

瀬戸が行くというのに、自分が行かないという選択肢はない。

「は? 用事は?」

「キャンセルするから、そっち行く。」

「別に無理しなくていいぞ。」

「いや、絶対行く。」

約束を目の前で反故にされた上に、黙って瀬戸が連れ去られるのを見送るわけにはいかない。それに宇津井と二人きりにして余計な事を吹き込まれても困る。

「坂口は定時で上がれる?」

「ああ。」

「じゃあ、終わったら下のエレベーターホールで待ち合わせな。瀬戸も。」

「はい。」

宇津井にはちゃんと目を合わせて頷くくせに、坂口と視線が交わった途端、瀬戸の瞳が揺れて恥ずかしそうに伏せられる。

初々しい恥じらい方に甘酸っぱさを感じていたのも束の間、気安く瀬戸の肩を叩く宇津井の手を全力で払い除けたくなる。触ってくれるなと念を送り続けたものの、瀬戸も宇津井も全く気付く様子はなかった。









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