隣りにいる瀬戸が機嫌を損ねている。布団を頭から被ったまま、彼が顔を出してくれる様子はなかった。
「瀬戸、怒ってる?」
「・・・。」
「だって瀬戸が可愛い顔するから、つい・・・。」
「坂口さん、反省してない。」
「イヤじゃなかっただろ?」
「そういう問題じゃないと思います・・・。」
瀬戸が頬を火照らせて熱い息をこぼしたのは、ついさっきの出来事だ。気持ち良さそうに坂口の手で達した証はすっかり片付けられてしまったけれど、満更でもない顔をしていた。そんなに恥ずかしがることでもない、という坂口の理屈は、瀬戸には通用しないらしい。
「待つ、って言ったのに、待ってません。」
「待ってるだけだと進まないだろ。」
「坂口さん、もっと誠実な人だと思ってたのに。」
「瀬戸、嫌がらなかったし、好きだったら触りたいじゃん。」
「開き直ってるし・・・。」
いつになく瀬戸が饒舌だ。歯向かってくる瀬戸が新鮮で、応酬するのが楽しくて仕方ない。
「瀬戸から好きって言ってくれるの、俺、待ってるよ?」
「・・・。」
布団に隠れて見えなくても、瀬戸の表情は手に取るようにわかる。きっと真っ赤な顔をして、こちらを睨んでいるに違いないのだ。
「なぁ、瀬戸。俺も布団使いたいな。もう遅いし、明日も仕事あるから寝よう。」
坂口の言葉に、瀬戸がようやく布団から顔を出す。染まった頬とキュッと閉じられた唇。目を合わせないまま、瀬戸がそそくさとベッドから逃げようとする。
「一緒に寝ようよ。」
「ソファで寝ます。」
「なんで?」
「だって・・・。」
潤んだ瞳が坂口を睨んでくる。しかし怒っているというより、恥じらっている様子だった。
「これ以上、何もしない。約束するから。」
「ッ・・・信用できません。」
気まずそうに瀬戸の目が一瞬坂口の方を見て、逸らされる。自分の下半身事情と照らし合わせて、瀬戸の言わんとしている事に合点がいった。
「コレはしょうがないだろ。ちゃんと我慢するから。」
「・・・て、ください。」
「ん?」
「シャワーするついでに、してきてください!」
初めて見る瀬戸ばかり。彼も居た堪れなさに声を張ることがあるんだと思ったら、堪らない気持ちになる。けれど衝動のままに抱き締めたり揶揄ったりしたら、本気で怒らせてしまうかもしれない。
感情的になっている瀬戸も見てみたい。しかし今は堪えようと思い直す。
「わかった。言う通りにしたら、一緒に寝てくれる?」
「・・・。」
「約束してくれるまで、シャワー行かない。」
「・・・わかりました。」
沈黙のあと頷いた瀬戸は渋々といった様子だ。けれど火照る頬が本気で嫌がっているわけではないことを告げていた。
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朝霧とおる