坂口の言う、好きの意味はちゃんとわかっている。だからこそ、今度は間違えたくない。しかし考えれば考えるほど頭は真っ白になっていくから困ったものだ。
向けられる好意に嫌悪感は全くない。ただ身体が熱くなっていくだけだ。頬の火照りだけでは収まりきらなくなって、身体のあちこちから熱が湧いてくる。握られたままの手が、きっと瀬戸の緊張を坂口に伝えているだろう。
坂口がソファから立ち上がる。彼の動作を縋るように目で追うと、手を引っ張られ、ついてくるよう促された。
「瀬戸、今日は一緒に寝ようよ。」
「え・・・。」
頭を駆けていったのは、初めてここに泊まった日のこと。坂口を強く男だと意識した日だった。居た堪れないのに、今でも彼の息遣いを思い出せる。一度脳裏に甦った光景は目を瞑っても消えてくれない。
「瀬戸、イヤ?」
坂口はズルい。瀬戸が拒まないことをきっと彼はわかっている。どこか確信めいたような瞳に見つめられると、瀬戸の思考は停止した。
ベッドの淵に腰を下ろすと、身体ごと布団の中に引きずり込まれる。強引なのに嫌じゃない。それが答えのような気はしたけれど、まだ心に巣食う不安を完全には捨てきれなかった。
「怖い?」
見透かしたような坂口の言葉に、黙って頷く。
「俺も。」
「・・・坂口さんも?」
苦笑して答えた坂口を意外に思い、小さく掠れた声で聞き返す。
「好きだから、怖い。きっと瀬戸も、好きだから怖いんだよ。」
「ッ・・・。」
待つと言ってくれたのに、急かすような言葉と口付け。坂口は瀬戸の答えを知っているかのような口ぶりだ。けれど勝手な決めつけだと反論する気にはならない。
自分でも汲み取ることのできない真実を、坂口が一つひとつ紐解いて示してくれる。彼の手によって暴かれる自分の想いは抵抗なく受け入れられる。
「坂口、さん・・・。」
「うん?」
唇が離れていくのを見計らって、坂口を呼び止める。強い眼差しを注がれ、一瞬怯んで思わず坂口のシャツを掴んだ。すると坂口が手を重ねてきて、嬉しそうに微笑んでくる。
「まだ、わからなくて・・・。」
「うん。」
「でも・・・坂口さんのこと、ずっと気になって・・・。」
「うん。知ってる。」
「え・・・。」
「もう瀬戸の気持ち知ってるから、ゆっくりでいいよ」
服の下に滑り込んできた手に、瀬戸の肌がざわめく。待つと言いながら、彼が全く待つ気がないのは明らかだ。けれどかつてと違うのは、強引な手が嫌ではないこと。坂口の手が辿っていく場所が熱を帯びる。肝が冷えるような恐怖は微塵も感じなかった。
「ッ・・・坂口、さん・・・」
「イヤだったら、引っ叩いていいよ。」
耳元で囁く声すら刺激になる。上がっていく体温に焦りながら、坂口の手を払い退ける気にはならない。腹部に唇が触れて、憶えのない感覚が腰に走る。
「坂口、さ・・・や・・・」
「気持ちい? イヤだっていう顔じゃないよ。ほら、ココも。」
「ッ!?」
スウェットの上から前を掌で撫でられる。刺激に震えて、初めて自分が興奮しているのだと知った。恥ずかしい。でもやめてほしくない。二つの感情が交互にやってきて戸惑っている間、ただ坂口を見つめることしかできない。
大きな手が布越しに幾度も瀬戸を弄る。じわりと先端が濡れるのを感じて、瀬戸はギュッと目を瞑った。
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朝霧とおる