忍者ブログ

とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

この雨が通り過ぎるまでに34

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

この雨が通り過ぎるまでに34

坂口と黒川の放った険悪な雰囲気に呑まれて、一言も発することができないまま、坂口の家に辿り着く。瀬戸の視線に気付いているはずの坂口が、一向にこちらを見てくれない。その事に不安は増して、思わず坂口の服を掴む。

「坂口、さん・・・。」

「ッ・・・。」

険しい目付きで前方だけを凝視していた坂口が、突然我に返ったように瀬戸を振り返る。

「瀬戸」

「・・・。」

「ゴメン。」

「いえ・・・。」

気まずくて不安だ。坂口がどこまで勘付いたかもわからなくて、気持ちをどこへ寄せたらいいのかわからない。けれど掴んで離さない手の強さも、広い背中も頼もしくて、黒川との距離を強制的に断ってくれた強引さも嫌ではなかった。

「とりあえず、上がって。」

ドアを開いて部屋へ入るよう促される。黙って従い、坂口が背後でドアの鍵をロックした音を聞くと、急に緊張し始める。無意識に服の裾を握り締めて玄関で立っていると、坂口の手が瀬戸の肩に乗せられる。

「上がるの、イヤ?」

「あ・・・いえ・・・。」

前に進むことも、過去を振り返ることも怖い。しかし坂口の目は、瀬戸の不安をすべて見透かすような視線だった。

スニーカーを脱ぐと、靴下までもが雨を吸っていることに気付く。そのまま上がり込むことは躊躇われて、モタモタと靴下を脱いで床に素足を着地させた。

「洗うよ、ソレ。」

「え・・・。」

「ズボンも濡れちゃって、冷たいだろ。とりあえず風呂入っちゃって。」

「・・・。」

「瀬戸に話したいことがあるから、泊まってほしい。はぐらかされたくない。ちゃんと聞いてほしいんだ。」

坂口の考えていることがわからなくて、ただ不安だった。黒川とのことを真っ先に問いただされると思っていたから、そうならなかった事に多少安堵の気持ちが湧いてくる。

「泊まってくれる?」

「・・・はい。」

頷いた瀬戸に坂口が微笑んで背を押してくる。

「冷えちゃうから、早く。」

「でも、坂口さんも・・・。」

二人で傘に収まっていたから、坂口も服のあちこちが濡れている。先輩を差し置いてシャワーを借りるのは躊躇われて進めずにいると、坂口が笑って尋ねてくる。

「一緒に入っていいってこと?」

「ッ・・・。」

坂口の言葉に思わず赤面して俯く。すると、早く入っておいでと念を押され、バスルームへ一人送り出された。









いつもご覧いただきまして、ありがとうございます!!
 ↓ 応援代わりに押していただけたら励みになります!
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
B L ♂ U N I O N


Twitter
@AsagiriToru
朝霧とおる
PR

コメント

プロフィール

HN:
朝霧とおる
性別:
非公開

P R

フリーエリア