一緒にいるのは気が楽だと言って近付いてきては、やっぱり他に好きな奴ができたと言って離れていく。どうしてもその関係を拒むことができない。

理由はわかっている。再び自分のもとへ彼が戻ってくるだろう事がわかっているから、弱い自分はこの手を離せない。みっともなくしがみ付いて、他人から見たらさぞ滑稽なんだろう。

「バカだな・・・俺・・・。」

なにもクリスマス前にフることはないじゃないかと思う。一緒に過ごせることを期待して買っていたプレゼント。それも今年は無駄になってしまった。

バーのカウンターに伏せながら、大友裕二（おおともゆうじ）は心に渦巻くドロドロとしたものをどうにか鎮めようと深呼吸をする。

フラれるたびに思うのだ。もうこれ以上彼を追い掛けるのはやめようと。しかし泣き疲れて寝入ったはずが、翌朝起きると彼のことを待つ気でいる自分に気付く。ダメだと何度心に言い聞かせても、どうしても大友は妙な心の広さを発揮して、彼の心が本当は自分のもとにあるのだと信じてしまうのだ。

彼にあげるはずだったプレゼント。さすがにクリスマス前に別れを切り出されたのは初めてで、打ちのめされる。

赤いリボンを解き、包装紙を剥がして現れた真っ白な箱。自分で選んだものだから、何が入っているかは当然知っている。彼が欲しがっていた時計だ。値段の張る高級時計を中から取り出して、大友は自分の腕にはめてみる。

「俺には大きいな・・・。」

傷一つない、よく磨かれた時計。その輝きは大友をあざ笑っているかのように冷たく見える。喜んでくれるものとばかり思って浮かれて買ったけど、これは彼を自分に繋ぎ止めておくための道具。ほんの僅かな時間を稼げたとしても、そこにあるのはきっと本物の愛情だったり恋慕ではないだろう。

「なんで嫌いになれないんだろう・・・。」

自由奔放でフットワークの軽い男。その分あちこち手を出すのも早くて浮気の回数は途中で数えるのをやめたくらいだ。女も男も見境ない。自分の手には負えない奴だと、もう何度も同じことを思ってきた。

優しくなんてない。自分本位で大友を顧みてくれたことなど今まであっただろうか。それでも美容学校で知り合った時から、新しい世界をたくさん見せてくれた男。

彼と一緒に街を歩いたり旅をすることは楽しかった。大友の知らない多くのことを、一体どこから情報を仕入れてくるのだというくらいに語ってくれる。何にも縛られず、ただ自由を謳歌する彼はカメラマンになって世界中を飛び回っている。限界を自分で定めたりすることなく、ただ進み続ける。男として確かに惹かれる部分はあって、解けない魔法にかかったままだった。

「都合がいいだけだよな・・・。」

行かないでくれと追い縋ることもなく彼を送り出し、求められたら抱かれる。彼が大友を良しとしてくれるのは、彼の言う事に否を唱えず静観を決めていることに他ならない。一度でも面倒だと思われれば、恐らく簡単に切って捨てられる。

わかっている。完全に都合のいい存在。金を要求されないだけ幾分マシ。カメラマンとしては大変優秀な奴だから、わざわざ薄給の自分から揺する必要が彼にはない。

そこまで思い至ると、この時計も彼にとってどれほど意味のあるものになったかというと甚だ疑問だ。一分一秒も繋ぎ止めることはできなかったかもしれない。

自分が持っていても仕方がない。行く宛てのない時計をどうするか悩んだものの、返品する気力もなかった。

「ねぇ。隣り、いい？」

「・・・はい、どうぞ。」

一人にしてくれと思うのに、物腰柔らかく来られると断れない。そんな性分を悲しく思いつつ、隣りに座ったサラリーマンらしき男に気力を振り絞って微笑んだ。









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あけましておめでとうございます！！
大した更新もなかった年末。
それにも関わらず、たくさんの方に見守っていただけていたようで、
有難い気持ちでいっぱいです。
また、３月にJ庭を控えておりますので、とりあえずはそこに照準を当てて準備をしていこうかと思っています。
私にとって今年は資格の勉強も控えているため、２月以降から本格的にバタバタしそうですが、
どうにかこちらの更新を続けていけたらと。
こちらのお話もどう行き着くかわかりませんが、長い目で見守っていただけたら嬉しいです！

それでは、皆さま、体調にはお気を付けてお過ごしください！！

良いお年を！！





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