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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

祝い酒2

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祝い酒2

木彫りの細工がしてある扉の向こう側からコツコツと音が鳴る。静かな夜であってもフェイの足音をこの耳で拾うのは困難だ。それくらいフェイは静かに歩く。足の悪かったライでさえ生前は静かな足運びだった。薬師とは総じてそういう者たちだ。

「世羅様、フェイでございます。」

だから気配もなく扉が叩かれれば薬師の誰かであることはすぐに想像がつく。そして今宵ここへ呼び寄せたのはフェイ一人であるのだから、来客は彼以外にあり得ない。

扉を叩く音を聞いた瞬間に心躍ってしまうのは、この熱情がある以上止めることはできない。来なければ行くと脅した甲斐があるというものだ。世羅の頭は、フェイを腕の中に抱き締めることで占められていた。

「待っていた。早くここへ。」

そっと扉を開けて入室してきたフェイめがけて前進し、扉が閉じた瞬間、腕の中へとフェイを閉じ込める。

「フェイ。レイは?」

「寝付きました。」

「もう五つだ。一人で寝られないほど幼くない。」

「いいえ、まだ五つです。未だ慣れぬ、あんな広い部屋で一人残されるのは、さぞかし心細いでしょう。」

器の広さを見せようとしてレイの話を振ったが、結局自分の中に巣食うレイへの嫉妬を晒してしまう。どうにもフェイを盗られたような気がして、冷静ではいられないのだ。実際、フェイが世羅と会ってくれる時間は驚くほど減っていた。

「世羅様。わかっておいででしょう。まだ小さいのです。」

「ッ・・・。」

どうにも気不味い。しかし心を分け合っている自分にも、もう少し時間を割いてくれたって罰は当たらないと思う。公務に励むのは当然の務めであるものの、癒しが全くないのでは虚しくもなる。

フェイと共に過ごせるのは冬の間だけ。その時間すら奪われてしまったら、何を糧に生きていけばいいのか。

ちっとも納得がいかず、世羅はフェイを抱き上げる。

「世羅様。怒っておいでなのですか。でもレイは・・・」

黙ったまま目を合わせなかった世羅にフェイは怒りの感情を察してしまったらしい。

小さな弟子を庇おうと、すっかり師匠の顔をしたフェイが反撃してこようとするので、世羅は口付けでフェイの唇を塞ぐ。

「みなまで言うな。そなたと過ごす大切な時間を奪われたようで寂しい。けれどそれが大人げない言い分なのもわかっている。」

寝台にフェイを横たえ、覆い被さる。幾度身体を重ねても身の在処に困るような戸惑った顔をするので、世羅はフェイに身も心も明け渡すよう、今度は深い口付けを贈った。

「フェイ。朝まで共に・・・。」

「そんなわけには・・・。」

「レイのもとには他の者を寄越したから。」

「・・・そうなのですか?」

それでフェイを部屋へ返さずに済むのなら当然手は回す。今頃、二人の臣下がレイの寝室近くで待機しているはずだ。

大人げなかろうがなんだろうが、この身を賭して愛している者をそばに置けないなんて、こんな苦行はない。

「フェイ、頼むから今宵だけでも。」

今宵だけで終わらせるつもりは毛頭ない。自分はこの先も、あの手この手で引き留める策を講じ続けるだろう。懇願すればフェイは世羅の頼みを振り切れない。しかしそれは弟子がいなかった頃のフェイだ。幼子を盾にされたら、どうしても世羅が悪者になる。悪者になるのは簡単だが、それでフェイの心が離れてしまったら意味がない。

レイの事にも心を砕いてみせることでようやくフェイは納得してくれる。責任感が強いフェイらしい気難しさだ。

「フェイ・・・。」

早くこの手で彼を溶かそう。フェイが目の前にいる自分だけを見つめてくれる時間が、世羅にとって何にも代えがたい至高の時なのだから。

フェイが反論を止めたので、その隙に乗じて世羅はフェイの唇を塞ぐ。もうこれ以上、愛しい口から他の名を聞きたくはない。ただ自分の名だけを紡がせ、一つになる喜びを噛み締めたい。

「ん・・・ふぅ・・・」

ゆっくり深く唇を重ねて貪っていると、ただそれだけで身体が熱く猛ってくる。体温の上がり具合に、少し世羅自身も焦るくらいだ。少し熱を冷まさないと、このままではフェイに乱暴をしてしまいそうだった。

唇を重ねたままフェイの衣に手を差し入れて、素早く剥き身にしていく。続いて世羅は自ら纏っているものを器用に脱ぎ捨ててフェイに重なった。

この昂りを一刻も早くどうにかしたい。フェイの手を己の象徴に導くと察した手が優しい愛撫を施し始める。

「はぁ・・・フェイ・・・」

熱い溜息と共にフェイの名を吐き出して、再びフェイに口付ける。

与えられる刺激は控えめで決して激しいものではないのに、凶暴な熱はすでに出口を求めて一点に集まり始めていた。

「あぁ、フェイ・・・しばらくぶりだから・・・」

上擦った声で哀願する。熱の一端を放とうと、早くも我慢の効かない身体は暴走し始めていた。

「世羅様・・・」

解放を促すように手を早めてくれたフェイに甘え、堪えもせずに待ち侘びた快感を味わう。

「うッ・・・く・・・ん、んッ・・・あ・・・」

夏の間に日に焼けた健康的な手を汚し、腹や胸に散った己の精を呆然と見つめる。全身が震えるほどの愉悦にしばらくまともな言葉一つ発することはできなかった。

「世羅様がこんなに我慢ならないなんて・・・寂しかったのですね。」

「そなたが目の前にいるというのに、触れられない日ばかりだ。」

慈しむように世羅の頬に触れたフェイは、困ったように小さな溜息をつく。

「駄々を捏ねても、そなたを困らせるだけなのはわかっている。なのに私は・・・そなたの重荷だな・・・。」

「重荷などと・・・。けれど私は一人しかおりませんから、ずっと世羅様のおそばにいることは難しいのです。」

「フェイ」

「はい。」

こんな風に困った顔をさせたいわけではないのに。生きて幸せであってくれればと願った日々を思えば、今この瞬間、自分は幸せなはずだ。けれど人は忘れっぽい生き物らしい。昨日より今日、今日より明日、フェイが何よりも世羅を優先してくれることを願ってしまう。

「そなたを想わない日はない。だからそなたも・・・時々でいいから思い出してほしい。けれどひとたびこの腕の中に来たなら、他の誰かを想うことは許さぬ。」

「世羅様・・・ッ・・・」

フェイが応えを紡ぐ前に己の唇で彼の口を塞ぐ。

ずっと共にと願ってしまうから上手くいかないと嘆くことになるのだ。一緒にはいられない。自分たちにとって幼少期からそれは当たり前のことだったはず。寄り添い、交じり合う歓びを味わって、自分は欲張りになってしまったらしい。

次々に迫り来る現実に順応できていないのは自分。フェイは淡々と受け止めているというのに、一緒にいたいという願望にいつまでもしがみ付いて困らせている。

世羅はこの瞬く間に消えていくフェイとの愛しい時間を、どうにか心と身体に刻み込もうと欲望をぶつける。フェイは世羅に否を唱えることなく、ただその激しさを受け止め続けた。










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薬師は自然に還ろうとする、この世界では神様に近い達観しつつある個で、
世羅はとても俗っぽく、あくまで人の頂点。
そりゃ世羅は自分の至らなさに嘆きもがきながら、フェイ!フェイ!ってなりますよね。。。
でも、世羅を苦しませるのが楽しくて仕方がない管理人(鬼)

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