前より心の距離が近く感じるのは、フェイが積極的になっているから。気の所為ではないと思う。
「フェイ、私の帯を解いてくれ。」
口付けの合間に手を引いて促すと、フェイの手が迷うことなく帯を緩めて解いていく。そして滑り込むように触れてきた手の温かさに感動して、甘い息をつきながら、再びフェイの唇を塞いだ。
「世羅様」
「どうした?」
「春までここにおります。」
「春になったら、また行ってしまうのか?」
「それが私の仕事でございますから。」
「つれないことを言わず、ずっとここで暮らせばいい。」
フェイが頷いてくれないことはわかっている。こういうところは流されず、とても頑固だ。
しかし薬師としての職務を全うしたいと言う彼の気持ちを蔑ろにはしたくなかった。
「私が否と言ったら?」
「世羅様は・・・そんなことをおっしゃる方ではありません。」
「参ったな。そなたの信用を裏切りたくない。」
肌を少しずつ露わにして、フェイの健康的な肌に唇を寄せて吸い付く。
「あッ・・・」
くすぐったそうに身をよじって、小さく声を上げる。同じように幾度か刺激すれば、快感に変わってフェイの象徴が布地を引き上げた。
「必ず帰ってくるのだぞ?」
「ッ、ん・・・お約束、いたしまッ、す・・・」
「キィにもよく言って聞かせねば。」
フェイの前を寛げると、先端が震えながら飛び出してくる。威勢が良いことに気を良くして、世羅は芯を持って上を向くそれを口に受け止めた。
「ひゃあ・・・あッ・・・ら、さまぁ・・・」
全身を強張らせながら愛撫を受け止めるさまが愛おしい。気持ちが良いのに、乱れて良いものやら葛藤しているのだろう。目を堅く瞑って、イヤイヤと首を振る。
「せら、さ、まッ・・・あつ、い・・・あッ、あぁ」
世羅の口の中でフェイのものが熱を上げていく。不慣れで我慢を知らないそこは、たちまち膨れて弾けそうになっていた。
音を立てて吸い上げて、名残惜しくも口から離すと、フェイはホッとしたように詰めていた息を吐き出す。
「フェイ、すべて許してくれるか?」
「・・・何も・・・怒ってはおりませんよ?」
「これからすることを許してほしいのだ。」
「ッ・・・」
「それとも、許せるのはここまでか?」
もちろん意地悪で聞いている。強請らせたくて。自分が必要だと言ってほしい。フェイが清々しいほど真っ直ぐ見つめてくれるようになってから、世羅は気付いてしまった。フェイの初恋は理世で、ようやく彼がその想いを過去のものにして振り切ったということを。
初めての心を兄に奪われてしまったことは悔しいけれど、自分はフェイにとって最後の想い人になれればそれでいい。悔し紛れなどではなく、心からそう思っている。最初ではなく、最後の人になりたい。
ここまでしぶとく想い続けてきたのだから、どんなに振り回されても、胸が裂けそうになっても、きっとこれから先もこの想いは変わらないだろう。
「世羅様・・・いじわる・・・しないで、ください・・・」
中途半端に投げ出された熱を持て余して、落ち着きなく抱き付いてくる。その仕草だけで煽られて、世羅はフェイに陥落した。
フェイが苦しそうに眉をひそめたのは一瞬だけ。世羅の手で施される愛撫に腰を震わせて、こちらが恥ずかしくなるくらい、ジッと目を合わせて見つめてくる。
火照った頬に壮絶な色気を感じて、世羅の我慢も限界だった。
自分より一回り小さい手に自分の象徴を握らせてみると、はしたなく蜜が浮かんでくる。拙い手付きでも世羅を昂ぶらせるには十分な刺激だった。
「ぁ、世羅、様・・・」
「フェイ・・・」
長い人生、寄り道をしたっていい。よそ見したって、最後にこの腕の中に戻ってきてくれるなら、自分は落ち込みながら、憤りながらも、きっと許してしまうだろう。
そう思うくらいには、この腕に抱く塊が愛おしい。
自由を愛して旅する彼には、きっとこの王宮は窮屈だ。時々放ってやらなければ、心が病んでしまうだろう。
ならば自分はここにいて、彼がいつ帰ってきてもいいように、この国を豊かにして待っていればいい。そうすれば自分の愛する朗らかな笑みをたたえて、彼は長い旅路から帰ってくるだろうから。
「ッ・・・あ・・・ら、さまッ・・・」
ようやくあるべき場所へ落ち着いた。そんな気がして、息を上げながらフェイを抱え上げて深く交わりはじめる。
「あぁぁッ・・・あ、ん・・・あぁ・・・」
二人で汗を散らしながら、深く繋がっていると、恐ろしいほどに脳が熱く焼けてくる。
「ッ、んッ・・・ああぁッ、あ、ぁ・・・」
フェイが息を詰めて強張ると同時に、腹部に濡れた感触が舞う。愛し合った確かな証を見つけて感激しながら、世羅も大きな波に攫われて果てた。
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朝霧とおる