もう、この世界にしがみ付いて、五年という歳月が経った。
オルガ、そっちで逝っちまった連中とバカ笑いしてるか?
おまえの肩の荷は降りたか?
どんなに時が過ぎても、あの頃の俺たちを思わない日はない。
だけどさ、不思議なんだ。
時の流れは俺に、鉄華団という道に懐かしさを与えた。
なぁ、オルガ。
あの時の俺には見えていなかった世界が、クーデリアを通して、少しだけ見えるようになったんだよ。
無知である故の無謀さは子どもの特権だけど、世界を知ることで生き方の選択肢が無数にあることを知ったんだ。
俺たちは知らなった。暴力のない世界を。
暴力以外に、この広い世界で居場所を勝ち取っていく方法はたくさんあるらしいってことを。
あの頃の俺は、全部おまえに押し付けて、暗闇の中を目指す星すらわからずに突っ走っていた。
最初から負け戦をしてたってことに気付くことができなかった。
知らなかった代償は見ての通り、大きかったよな。
俺たちの家族を大勢捥ぎ取っていった。
ここ最近、考えるんだ。
ラスタル・エリオンにあって、俺たちになかったモノの事を。
立ちはだかるものに銃や刃を向けることだけが世界を変える方法じゃなかった。
目の前にあるものを力尽くでこの手に入れて、いつの間にか……いや、もしかしたら最初から、抱えきれるはずのない大きなものを掴もうとしていたのかもしれない。
学のある奴らはさ、俺たちを見てバカな子どもだな、って思うだろうな。
でも、もがき苦しんで、たくさんの大切なものを失いながらも、おまえは確かに与えてくれたんだ。
俺たちが生きていくべきそれぞれの道を。
共に過ごした日々に、後悔はない。
欠片もないぞ。
バカはバカなりに腹括ってオルガについていくことを、他でもない俺自身が決めたんだから。
認めるのは今でも癪だけど、俺はおまえに憧れてた。
真っすぐで情に厚くて、鉄華団という家族と地に足の着いた未来をくれた。
俺にとって鉄華団という居場所は、刹那的でも一番心を滾らせることのできる場所だった。
俺たちはバカだったけど、可哀想な奴らではない。
歴史の敗者であっても、葬り去られ二度と振り返ってもらえなくとも、命を賭して輝こうと駆け抜けた日々は確かにあったんだ。
嘆く必要なんてない。
今を生きる俺たちに、過去を後悔するためだけに振り返っている時間はない。
前を見て、生きることで一矢報いているんだから。
どんなに離れていても、もう会うことができなくても、俺たちの絆が消えることはない。
なぁ、オルガ。
俺は当分、そっちには行かねぇぞ。
真実の愛ってやつを見つけないと、生き残った甲斐もないしな。
皺くちゃのジジイになって、おまえらが俺を見ても誰だかわかんなくなるまで生き抜いてやるから。
土産話は死んでからいくらでもできる。
だからもう、こっちのことは心配すんな。
そっちはそっちで、楽しくやってくれ。
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シノヤマを書こうとしたら、泣き過ぎて先に進まないので、
とりあえずユージンでワンクッション置いてしまいました。。。
ちなみにpixivでは「
ぽっぽ」という名で載せています。
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朝霧とおる