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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

新緑の楽園27

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新緑の楽園27

春哉が泣いたわけは直樹が想像していた理由ではなかったけれど、春哉の恋情の矛先が自分に向けられていることに戸惑わずにはいられない。ひと目惚れされるような要素が自分にあるとは到底思えないし、経験のない感情にピンとこなかった。

曖昧に濁し、はっきりと答えを出さなかったのに、春哉は微笑んでくれる。彼の見せてくれる顔を真に受けて安心していいのかわからないけれど、露骨に泣かれたりしなかったからホッとしたのは事実だ。

擦り寄ってくる彼の積極性は復活している。むしろ以前は感じなかった明らかな欲情を読み取ることができて、直樹は春哉の辿っていく手をジッと見つめることしかできなかった。

「ナオはどこまでならいい?」

胸の鼓動を確かめていた手が、直樹の手を取って握る。直接言葉で好きだと言われるより、春哉の瞳は雄弁に好意を伝えてくる。それにドキドキして心臓が早鳴る時点で答えは出ているような気がするけれど、直樹には自分の気持ちに確信を持てるほどの自信がなかった。

春哉がどこに触れようと、嫌悪感は微塵もない。ただ、泉ノ森へ来てから続く昂揚感が見せる幻なのか、本心から春哉を望んでいるのかわからない。春哉の問いに自ら答えを導き出せなくて、直樹は目を伏せる。待たせても、間違った答えを出しても傷付ける。それだけは確かだから、余計に前へ進むことができない。

「春哉さんは、どうしたいんですか?」

質問に質問で返すのはズルいし、自分だけ気持ちを見せないのはもっとズルい。春哉はきっと手持ちのカードを概ね見せてくれているのだ。回りくどい事や、人を騙そうという考えが彼の中には存在しないと、僅かな共同生活でも知っているから心が痛む。

「ナオが良いよって言ってくれること、全部したい。」

「じゃあ……手繋いで、寝ましょ。」

「……うん。」

残念そうな顔を隠しもしないで、春哉が手を握る圧を強めてくる。本当はもっとあれこれ迫ってみたかったと彼の顔には書いてある。経験はないけど、ないなりに知識だけはあるから、春哉に手を伸ばす自分を想像して我知らずに顔を熱くする。すると春哉が目敏く直樹の様子に反応した。

「ナオ。ホントに手繋ぐだけ?」

「ッ……繋ぐだけ、です。」

「むー……。」

頬を膨らませて抗議してきた春哉は、直樹を睨みながら手の甲に口付けてくる。曖昧にして逃げ回る直樹を非難するような眼差しにドキリとして手に汗が滲んだ。

「いいもん。ナオに絶対好きになってもらうもん。」

不貞腐れたように目を瞑った春哉が丸まって身を寄せてくる。心底可愛いと思った気持ちを伝えれば喜ぶかもしれないけれど、自分ですら自信の持てない気持ちを不用意に伝えるわけにはいかない。

無意識のうちに彼の柔らかい髪へ手を伸ばしかける。ハッとして、触れていいものかと一瞬躊躇った。しかし春哉に対して誠実になれなかった自分を反省し、少しだけ己の欲求へ素直になってみる。

撫でた瞬間、春哉の身体が震え、彼の身体に緊張が走る。直樹から見ても、それは明らかだった。柔らかい髪に手櫛を繰り返している間、春哉の緊張が解ける様子はない。春哉の活発な声やハラハラさせられる行動がない分、より彼の強張りを感じ取ってしまう。

春哉だって怖いのだ。でも嘘がつけないから突っ走ってくる。明るく振る舞っていただけで、彼だって本当は平気ではないはず。もしかしたら曖昧な直樹の態度に深く傷付いているかもしれない。

泣いている顔は見たくない。だから、泣かせてしまう前に、ちゃんと答えを出せたらいい。春哉の心境に思い至ると、一途で隠し事をしない素直さが愛おしくなる。震える睫毛に春哉の必死さを見て取って、直樹は心を温かくした。






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いつもご覧いただきまして、ありがとうございます!!
GW終わってしまいましたね。
寝坊しないか心配し過ぎて前日は九時頃就寝してしまいました。
幸か不幸か起床予定時刻の一時間前には起きることができ、バス停まで走ることなく、優雅に歩いて出勤しました(笑)


さて本編の方は、早く年長組(竜崎×柳)ターンに入りたいなぁ、と思いつつ。。。
恋愛初心者過ぎてちっとも前進しない春哉と直樹、気長にお付き合いいただけると幸いです。



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