畳まずに放置していた洗濯物や、机の上で雪崩れている教科書やノートを見て、竜崎が仁王立ちしている。
「ぴかりん、大丈夫だよ!」
立ちはだかる竜崎に向かってみるが、上から見下ろされ腕組みされれば彼の迫力には到底敵わない。
「大丈夫じゃねぇだろ。明日来んだぞ。」
「ぴかりんに迷惑掛けないって決めたのー。」
「即刻片付けろ。」
「うー……。」
ドアの前で項垂れていると、竜崎の後ろに控えていた柳が呆れ顔で勝手に部屋へ入ってくる。
「光はベッドの方やって。俺は机の方やるから。新入生の机も散らかってるんじゃ、可哀想だろ。」
すぐ熱くなるタイプの竜崎とは違い、柳は淡々としている。しかし春哉を一瞥する目はゴミ屑を見るかのごとく凍り付きそうな冷たさだった。
「やなぎん、いいってば。自分でやるから!」
「この有り様で?」
「うッ……。」
もうどこに何を戻したら良いのか、果たして片付く余地があるのかもわからないほど散らかっている。竜崎が部屋を出てから羽を伸ばしていただけなのだが、一人だと身の回りのことすら碌にできないのだと、この一週間で思い知った。
「後輩来んの、楽しみにしてんだろ?」
「これじゃあ、白い目で見られるよ。」
竜崎と柳から畳み掛けるように責められて、春哉は床に蹲って二人を見上げる。
「萎れてねぇで、やんぞ。」
「はーい……。」
二人に迷惑を掛けないと息巻いていたのに、柳に宣言してすぐ彼らの手を借りることになってしまった。一人では何もできないと突き付けられているようで、さすがに落ち込む。肩を落として雑多な机を眺めていると、竜崎がせかせかと掛布団を抱えて部屋から出ていく。柳と二人きりで残されるのは心許ないが、彼の逆鱗に触れまいと息を潜めて教科書に手を伸ばした。
「どうりで成績が奮わないわけだよね。」
教科書を横から攫われて、柳がページをめくる。誌面で踊るウサギを見つけた彼は、呆れたように溜息をついた。
「でも……うまくできてるね。」
柳が小さく噴き出したので、そんな彼に驚き、春哉は恐る恐る顔を覗き見る。柳の目にはいつもの鋭さがなく、教科書に向ける視線も幾分柔らかい。彼がそんな顔をするのが意外で、違う彼の一面が見られて嬉しかった。
「才能あるかな?」
調子に乗って食い込んでみる。
「勉強するより向いてるかもね。」
褒めてはいないと釘を刺されたが、特段気分を害したわけではなさそうだった。疎まれているのは竜崎のことがあるからで、意地の悪いことを仕掛けてくるわけではない。柳のことを性根が悪いと思ったことはないから、仲良くできるものならそうしたい。
「余計な気使わなくていいから。」
「……。」
「春哉の場合、ボロが出るでしょ?」
「そうだねぇー……。」
「ホント……バカ正直。」
「そうなのー。」
「そこ否定するとこでしょ。」
春哉の柔らかい癖毛頭に、柳の掌が着地する。軽く二度ほど跳ねた後、柳は大きな溜息と共に張っていた気を緩めたようだった。
「光とのことも、今まで通りでいいから。」
「ぴかりんと上手くいった?」
「……それなりにね。」
「もっと詳しく!!」
「掘り下げようとしないで。」
柳が素っ気なく顔を背けたが、照れ隠しだというのは春哉にもわかる。バタバタ足踏みをしながら悶えて笑いを堪えていると、竜崎が戻ってきてバッタリ目が合ってしまう。
「春哉。てめぇ、片付ける気あんのか?」
「あるあるー!!」
「隆一、ごめんな。手伝わせて。」
「いいよ、別に。」
竜崎と柳が見つめ合う瞬間、二人は春哉の知らない顔をする。羨望の眼差しを送りながら、もうすぐこの部屋へやってくる後輩に期待で胸を膨らませる春哉だった。
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皆さま、こんばんは。
変わらずお付き合いいただけることに感謝、感謝です!!
「新緑の楽園」で二か月近く道草を食っていた当ブログですが、
そろそろお仕事話が書きたくなってきたぞ、ということで。。。
明日から今藤×甲斐(「百の夜から明けて」)の二人でリハビリしたいと思います。
更新時刻は変わらず0時を目指してまいります。
またお付き合いいただけましたら嬉しいです。
風雨に晒された昨日ですが、皆さまお怪我などなかったでしょうか。
枝や葉に混じって、小さなカエルが宙を舞っていて、ビビりました。
当人が一番驚いていたことでしょう。
車道に落下していたので、行く末が大変心配でしたが、見届けることは叶わず。。。
体調も崩しやすい時期ですので、お身体労わってお過ごしください。
管理人より
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朝霧とおる
1. こんばんは~♪
この2ヶ月、毎日、春哉が何を言い出すか何をしでかすか楽しみで堪りませんでしたw
パラパラ漫画と、おにごっこには爆笑してひっくり返りそうになりましたヾ(≧∀≦*)ノ〃
はぁ~春哉、可愛くて面白くて最高♪
キィの次に好き!
春哉とやなぎん。タイプも性格も全然違うのに、ぴかりんを翻弄し、手の掛かるとこは、めっちゃ似てる(笑)
春哉とぴかりんの応酬がまた、いつか見たいです(^^)
ナオにぐいぐい迫りまくる春哉も(笑)
たくさん笑ってたくさん元気を貰えました!ありがとうございました(*^^*)
では、これから紫陽花を読ませていただきますね~♪
Re:こんばんは~♪
柳は嫌がりそうですが、竜崎を振り回すという意味では春哉に似たり寄ったりです(笑)
キィと春哉は、形態は違えども、図太いところは共通しているので、なぎ様の心に二人が刺さっていることが嬉しいです。
久々にキィの名を見て、懐かしい胸中ですが、夏に向けてそろそろあちらの番外編も・・・と考えておりますので、気長にお待ちいただけると有難いです。
「紫陽花」は梅雨に見ごろとなりますが、不安定な空模様に二人を重ねてみました。楽しいだけではいられない複雑なお年頃感が出ていればなぁ、と書き進めています。
こちらも見切り発車ですが、最後までお付き合いいただけたら幸いです!