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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

新緑の楽園「三人の少し前」18

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新緑の楽園「三人の少し前」18

「光の持ち物はこっち?」

「そうだよぉー。」

点呼も終わってベッドで寛いでいたところ、やってきた柳を春哉は正座で出迎える。竜崎の勉強道具を取りに来ただけだったが、近寄ってくるなと言わんばかりのピリピリした空気に、春哉は背筋を伸ばす。

恐る恐る柳の背中に視線を投げていると、気配を感じ取ったのか柳が振り返ってきたので飛び上がる。しっかり目が合ってしまって、ジロジロ様子を窺っていたのはすぐに気付かれてしまった。

「何?」

冷めた柳の声にヘラヘラ笑い返す。しかし睨んできた柳の目元が少し赤く腫れているような気がして、挙動不審になりながら慌てて目を逸した。

「な、何でもないよ! やなぎん、相変わらず綺麗だなぁー、って思っただけ!!」

「何それ……。」

わざわざ竜崎の荷物を取りにきたくらいだから、竜崎を邪険にしているわけではないだろう。けれど何か二人の間に起きたことは確かだ。普段の柳からは、泣く姿を想像することができない。いつだって澄ました顔をしていて、感情を欠片も見せそうにはないからだ。

「……少しくらい片付けたら?」

「はぁーい。」

疎まれているのをひしひしと感じ取って、春哉は肩を竦めて柳へ返事をする。去っていく柳の背中を横目で見送って、ドアが閉まったところで全身から力を抜いた。

「うー……やなぎん、機嫌悪い……。」

「おまえ、なんかした?」

「わかんないー……。」

柳の不機嫌な空気に圧倒されて、彼が去った後も声を潜めて苦笑いをする。

自分と柳の接点は竜崎だ。だから原因は竜崎絡みで間違えないだろう。不興を買う心当たりはあるが、何が柳の地雷を踏み抜いているのかまではわからない。

「先輩たち、まだ喧嘩中?」

「ぴかりん、仲直りしたって言ってたんだけど。」

「でも、なんか怒ってたよな?」

「うーん……。」

「ま、ほっとこーぜ。」

「だよねぇー。」

竜崎の恋路は邪魔したくないし、柳をこれ以上怒らせるのも得策ではない。知らぬが仏だ。竜崎と柳のことは忘れようと決意し、クラスメイトとお喋りに興じていると、ドアが勢いよく開けられ竜崎が現れる。

「春哉。てめぇ、隆一に何言った?」

「な、な、なんにも言ってないよ!?」

「どこまで知ってんだ?」

「えッ……え?」

襟元を掴まれ、至近距離で睨まれる。背筋を凍らせて必死に首を横へ振ると、不審そうな眼差しはそのままに竜崎が溜息をついた。

「ぴ、ぴかりん、足……。」

「隆一と俺のこと、どこまで知ってんのか聞いてんだよ。」

話を逸らそうと試みるものの、拙い話術はあっさり見抜かれてなかったことにされる。小声の耳打ちですら凄みがあって、逃げる術もない。

「ぴ、ぴかりん、怖い!」

「正直に言え。」

「い、言うから、離して!」

春哉の願いは聞き入れられず、片腕であっさり廊下へ引きずり出される。ドアが閉まる寸前、ベッドの上にいたクラスメイトと目が合い合掌されて見送られた。









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