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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

あまのがわ喫茶室24

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あまのがわ喫茶室24

天野の夕食はいつも通り美味しくて、飯島の言った通り涼介は嬉しそうで、ホッとしたら急に眠気がやってくる。

ふぁッとひとつ欠伸をして涼介の部屋に上がると、彼が背後から抱き締めてくる。背中を伝ってくる涼介の鼓動は早かった。不思議に思って見上げると、キスが降ってくる。

キスはし終えたのではなかったのか。触れた温かい唇が震えているような気がするのは気の所為ではないと思う。

涼介がなにやら緊張しているようだとわかった結弦は、ジッと涼介を見上げて彼の思うところを見定めようとした。

「結弦、眠い?」

「うん、ちょっと。」

「そっか・・・。」

大きな溜息と共に彼の肩から緊張が抜けていくのがわかる。首を傾げた結弦に、涼介は何でもないと言うように首を横へ振って苦笑した。

「お風呂、先入っておいで。」

「うん。」

サイズの合わない大きな着替えを渡されてバスルームへと向かう。こっそり振り返って涼介の様子を窺ってみると、なにやら考え込んでいるようだった。


 * * *


この状況に浮かれて盛り上がっているのは、どうやら自分だけらしい。好きだと伝えて、それで満足したらしい結弦は、すっかり安堵の表情を浮かべて涼介の隣りに身体を横たえていた。

「涼介」

「・・・うん?」

結弦の手が涼介の額に伸びて、いつの間にか寄っていた涼介の眉間をぐいぐいと人差し指で押し潰してくる。

「怒ってる?」

「怒ってないよ。」

「でも、変な顔してる。」

「・・・。」

手を伸ばしてもし嫌がられたら、と思うとやっぱり不安だ。自分と結弦の気持ちが交わっているのかどうか、きちんと確かめる必要はある。少しだけ試してみようと、眉間を押す結弦の手を取って、自分の口元へ運ぶ。涼介が手の甲に唇を寄せるのをジッと見つめていた結弦だったが、幾度か触れているうちに彼の頬が少し染まった。

涼介の好きも、結弦の好きも、ただ言葉を突き合わせるだけでは、同じかどうかすらわからない。自分たちの語彙力と理解力が足りないのか、言葉だけで意思の疎通を図ることに限界があるのか。

拒まれることは怖いけど、何も変わらないことも耐えられなくて。おっかなびっくり、結弦の方へとにじり寄って、今度は結弦の唇を奪う。

涼介の様子をただ窺うように、受け止めるだけの結弦だったが、ついに身じろいで涼介と距離を取ろうとする。さっきまで彼の顔には羞恥は浮かんでいなかったけれど、頬だけでなく耳も首筋も赤くして、焦った表情をして逃げていこうと身体を引く。

涼介の意図はわかっているらしい。しかし大きな抵抗はされなかったので、思い切って服の下に手を滑り込ませた。

「ッ・・・」

結弦が息を呑んで、食い入るように見つめていた涼介と目を合わせる。

「涼介・・・。」

「うん?」

「変に、なっちゃう・・・。」

結弦が困ったようにかぼそい声で訴えてくるので、ようやく彼の言わんとしていることに気付く。

「うん、俺も。」

嬉しくて、顔が熱くなる。身体中の血が沸き立つような感覚に、涼介は居ても立っても居られない衝動を堪えることに苦心した。

あえて結弦に触れることはせずに、彼の手を兆し始めていた自分の前へ導く。布越しに触れて同じ現象に悩まされていることがわかった途端、結弦はホッとしたらしい。強張っていた身体から力を抜いて、逃げようとはしなくなる。

「同じ。」

「うん、同じ。好きな人に触ったり触られたりしたら、こうなるのは当たり前だよ。」

「変じゃない?」

「ちっとも、変じゃない。」

好きだと訴えるサインはどこにあったのだろう。振り返って考えてみてもわかりやすかったとは到底思えない。結弦自身ですらわかっていなかった気持ちで、涼介が強引に彼の潜在意識を引っ張り上げて発覚したのかもしれない。

涼介の頭にチラリと父親たちの顔が過る。罪悪感がないわけではないけれど、盛り上がってしまった気持ちを抑えることはどうしても涼介にはできなかった。

「結弦」

「うん?」

「触りたい。気持ちいいことしよう?」

「ん・・・。」

結弦に触れる。それは何度も夢想したこと。しかし経験の伴わない行為に、涼介自身も胸がいっぱいで実際どこまで手を伸ばしていいものかと途方に暮れる。嬉しくて頭が回らないことって本当にあるのだと、頭の片隅で感心していた。

「りょ・・・す、け・・・」

前戯もあったもんじゃなくて、結弦に覆い被さり、彼の屹立を直に握って確かめてみる。

腰の前と涼介の手を困ったような顔で見つめてくるので、結弦へ見せつけるように手で擦り上げると、気持ちがいいのか結弦は息を詰めた。

「ん、出ちゃう・・・」

「いいよ。結弦がイくところ、見たい。」

泣きそうな顔で見上げてくるものの、結弦はジッと目をそらさず凝視してくる。こちらが彼の視線で焼き切れそうだ。ちっとも触れていない涼介の前も窮屈そうに下着とスウェットを押し上げていた。

「ふぅッ・・・んッ・・・」

焦ったように腰が引けて、次の瞬間に結弦の先端が蠢いて白濁の蜜を噴き出す。

「結弦」

「ッ・・・ん・・・」

悩ましげに頭を振ってまた逃げていこうとする結弦を、汚れるのも厭わず抱き締める。逃亡を阻止して腕の中に掻き抱くだけで、我が物にできたように涼介の心は満たされた。

「逃げないで、お願い。」

「・・・ん。」

結弦の身体が腕の中で身じろいでいたのは、ほんの僅かな間だった。可愛い姿を目に焼き付けて、その余韻に浸っていると、脱力していた身体から寝息が聞こえてくる。

「・・・結弦?」

確かに吐精すると眠くはなるけれど、昂った身体を放置したまま先に寝てしまうなんて酷い。

「結弦、結弦・・・。」

「ん・・・」

揺さぶっても呻いたのは最初だけで、その後はうんともすんとも言わない。いつもなら結弦らしいと微笑ましく思えることも、この時ばかりは殺伐とした感情が湧いてくる。

涼介は肩を落としながら、盛大に溜息をついた。









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