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とおる亭

*BL小説* 全作品R18です。 閲覧は自己責任でお願いいたします。

あまのがわ喫茶室11

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あまのがわ喫茶室11

履修登録のガイドブックに目を通していた結弦だったが、ページをめくる手が次第に遅くなっていき、そしてついにその手が止まったのは日付も変わる頃だった。

体育座りのまま寄り掛かってきた塊を受け止める。すうすうと気持ち良さそうに寝息を立てている彼に手を伸ばしたい欲求と戦うこと数分。結局思いとどまった涼介は、結弦を起こさないようにゆっくりと抱え上げ、ベッドまで運んで掛布団に包んでやった。

夕飯を誘った時点で結弦が泊まっていくだろうことは覚悟していた。だから突然押し掛けてきた日のような動揺はない。抱き締めたいという緩やかな欲求は依然としてあるものの、一緒にベッドをともにするくらいの度胸はある。

「はぁ・・・。」

眠ってくれれば幾分マシだ。少なくとも緊張や劣情を悟られる心配をしなくて済む。肩に入っていた力を抜いて、涼介は狭いシングルタイプのベッドに結弦とスペースを分け合って身体を横たえた。

週明けから、涼介も結弦も授業が徐々にスタートする。ひとたび始まってしまえば、こうやって二人で過ごすことも減っていくだろう。そう考えると、耐え忍ぶだけのこの時間も貴重に思えてくる。

小さく丸まって寝るのは結弦の癖だ。何かを掴むとなかなか離さないという困った癖もある。幸い今夜はどこも掴んでいないと油断していたら、スルスルと手が伸びてきて、結弦は涼介の部屋着の裾を掴んでくる。試しに引き抜こうと試みたものの、残念ながら無駄骨だった。決して逃さないと言わんばかりの必死さだ。涼介は離すことを早々に諦め、息をつく。

部屋を暗くしても睡魔の波はやってこない。仕方なく、暗闇の中で結弦を見つめていると、じわじわと確実に中心が芯を持ち始める。

「やっぱり、無理かな・・・。」

しかし裾を掴まれている以上、強引に引き離すのも可哀想で、八方塞がりだった。

逃げ場はない。どうか起きないでくれと念じて、窮屈な前を寛げる。自分の右手しか知らないというのも悲しい話だけれど、誰でもいいわけではないのだ。目の前に欲情する相手が無防備に寝顔を晒している。その現実だけで、涼介は想いを遂げた幻想に浸れる気がした。

「ふぅ・・・」

声を殺して、息を詰めて、好きな子のそばで自分を慰めていることに興奮する。虚しさもあるけれど、知られて軽蔑されるよりは何倍もマシだと思えた。

こちらを向く結弦の寝顔は暗くてあまりはっきりとは見えない。そのことが幾分涼介の心から罪悪感を削ぎ落としていた。

心の中で結弦の名前を呼んでみる。すると手の中で膨れていた熱はより一層滾って先端が解放に向けて蠢いた。

結弦はまるで起きる気配はない。もとより一度寝てしまえば起きないたちだから、こんな行為に耽っていることを悟られる心配は限りなく低い。しかしいつ知れてしまうかわからない状況が、かえって涼介を興奮させる材料になっていることは確かだ。

弾ける予感をおぼえてから達するまで、さほどの時間はかからなかった。

「うッ・・・ん・・・。」

ティッシュの柔らかい感触に包まれて、下腹部を震わせて欲を放つ。今まで感じたことのない愉悦に息を上げていると、急に結弦が身じろぎ始めて心臓が跳ねる。

「ん・・・りょ、す、け?」

名前を呼ばれて慄き、慌てて自慰の名残りを始末する。

しかし耳を澄ませてその後の言葉を待ってみたが、どうやら寝言だったらしく起きた気配はない。バレた可能性は限りなく低そうだ。

涼介の心臓は依然爆ぜるのではないかと思うほどに大きく動き、熱いわけでもないのに身体中で嫌な汗が噴き出してくる。

どう考えても今夜は安眠できない。また寝不足になることは必至だと思い、結弦が起きた後にでも惰眠を貪ればいいだろうと考える。しかしそんな思いに縛られていたのは僅かな間だった。

規則正しい結弦の寝息と、吐精で程よく疲れた身体は、徐々に眠気を呼び寄せる。涼介は結弦の後をしっかり追いかけて、いつの間にか眠っていた。


 * * *


身体が重い。正確に言うと、何かに圧し掛かられている感覚だった。覚醒していく意識の中で、身体に感じる重さはより一層強くなっていく。一体どうしてこんなにも重いのだろうと眠気まなこを開くと、結弦の上半身がうつ伏せで涼介の上に重なっていた。

重いはずだ。いくら薄っぺらい身軽な身体をしているからといって、眠って脱力した身体はそれなりに重さを感じる。可哀想だが、さすがに息苦しいので、持ち上げて身体を横へスライドさせる。結弦のことはそっとベッドの上に横たえて、しっかり掛布団をかけてやった。

「う、ん・・・。」

横たえた位置の収まりがよくなかったのか、数回寝返りを繰り返す。ジッと様子を窺っていると、結弦は瞼を薄っすら開けて、焦点の合っていない目は暫く瞬きもせず、身体は身動き一つしなかった。

「おはよう。」

涼介が挨拶を投げてみても返答はない。その代わりに、ふわぁと気の抜けた欠伸をしてみせた。

「あ・・・。」

何かに気付いたように小さく声を上げた結弦に、涼介はどうしたのかと目線で問うてみる。

すると何やらごそごそと気まずそうに掛布団の下で小さく丸まったので、涼介は察してしまった。

朝勃ちなんてものを結弦に教えてやったのは中学時代の自分だ。どちらかの家で二人一緒に寝起きし、変化を起こした自身の身体に結弦が戸惑っていたので説明してやった記憶がある。

「・・・。」

昨夜の今日でむしろ後ろめたいのは涼介の方だった。いらぬことを口走る前になんとかこの場から逃げ去りたい。

結弦が涼介から視線をそらしていたのをいいことに、涼介は結弦の現象に気付かぬフリをしてベッドから降りる。結弦の方に身体を向けないよう努めたのは、もちろん涼介だって身体に変化をきたしていたからだ。

健康体で朝を迎えれば致し方ない。しかし涼介にとってはあまりに生々しくて、熱いシャワーを浴び気持ちが落ち着くまで、結弦の顔を正視できなかった。








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年末の殺伐とした空気感が、初々しい二人を美味しくいただきたい病にさせます。
だ、誰か・・・。
そして夏になって仕事が閑散期に入ると、ガッツリ仕事をしたくなるんですよね。
困った脳みそです。。。

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