「うーん・・・ッ! わッ!」
「ちょッ! 危ないですから、やめてください!」
脚立に乗って店の奥にある棚から、アレンジメント教室で使う花材を取ろうと背を伸ばして転倒しそうになる。香月が気付いてホールドしてくれなかったら、恐らく顔面から花器に突っ込んでいた。危ない、危ない。割ったら花器も勝田の顔も大惨事になるところだった。花器は布にくるまれ桐の箱に入っているが、問題はそこではない。
「使う、って言ったの君でしょ。」
「言いましたけど、取ってくれとは言ってません。」
香月にしては強い口調で言い返してくる。親切心で取ろうと思った気持ちを、蔑ろにされたと思うこと自体、自分の心は歪んでいるかもしれない。可愛げのない悪態をついて、そっぽを向く。まぁ、そもそもおじさんに可愛げは求めていないと思うけど。
「花器は最悪割れたって買い直せばいいけど、凌さんがケガをするのはダメです。」
「・・・そう?」
「当り前じゃないですか。」
自分って、単純だ。一番に心配してくれたとわかっただけで、惚れ直すのだから。
飼い慣らされるってこういうことだろう。自分は香月の手の上で、彼の思うように操られている。わかっていても素直に踊らされる羽目になるから、勝田の凝り固まった思考回路は幾分救われていた。
「凌さん、そっちでリボンのカット、お願いできます?」
本当に香月は勝田の操作が上手い。お願いというかたちで頼まれれば、指示通りに動きたくなる。
「うん、いいよ。」
勝田の自尊心を傷つけないよう上手く誘導した香月は、勝田の視線がテーブルへ向いた隙に例の花材を取ったようだ。背を向けていたが、勝田は音と気配で感じ取る。
「今回は1メートルずつで。」
「わかった。」
赤のリボンを解いて竹の定規に当てて、香月の指示した長さに切っていく。次回はクリスマスリースを作るらしい。かつて厳密にやり過ぎて香月に笑われた。こういうものはだいたいの長さでいいそうだ。
没頭し出した勝田は、一言も発さずに黙々と作業に打ち込む。今回はだいだいの長さにしたのに、やっぱり香月は面白いものを見るように笑った。
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朝霧とおる
1. お疲れ様でした(^∇^)
無料配布とは思えない読み応えで、いいの?!と思っちゃいましたが(笑)
シードの話、厚かましくて、すみませんm(._.)m
サイト消えちゃったの、結構ショックだったもので、当時のままでもいいから復活してほしいなぁなんて。
学園ものがとにかく好きで、また読めたら嬉しいのですが!!(T_T)
お礼SSありがとうございます!
体調にお気をつけて、これからも頑張って下さい!!
Re:お疲れ様でした(^∇^)
種のサイト・・・(笑)
あれ、今さら晒して需要あるでしょうか?
検索サーチとかどうなっているのでしょう。。。
退会などはせず、放置したままパスワードも忘れたので、もうどうすることもできないのですが(笑)
まずデータを探すところから始めてみます。
見つけてしまったら、その時冷静に考えてみますので、あまり期待しないでください。
また3月、無事通りましたら、よろしくお願いいたします!